米人気ボクサーが井上尚弥戦をぶち上げるも、リング誌元編集人は「期待してはいけない話」
ガルシア vs. 井上尚弥は実現するのか?
一言で言えば「ノー」だ。 井上はすでに4つの階級を乗り越えて122ポンド(55.3kg、スーパーバンタム級)まで体重を増やしている。彼はもうひとつ上のフェザー級(126ポンド/57.1kg)に到達する可能性が高いが、それを超える可能性は低いとみられる。 なぜか? すべては「サイズ」に帰着するからだ。井上は身長165cm、リーチは171cm。彼は偉大なファイターだが、今のスーパーバンタム級に──そして実際に偉大になるために──段階的に上がってきたのには理由がある。井上が階級を上げれば上げるほど、対戦相手も比例して大きくなる。それは明々白々だ。 一方、ガルシアの身長は174cmで、リーチは178cmだ。彼はライト級選手として活躍し、その後スーパーライト級(140ポンド/63.5kg)に階級を上げた。つまりガルシアは現在、井上が現在主戦場にしている階級よりも4つも上に位置している。 その体重差は8.2kg。井上がフェザー級に上げたとしても6.4kg違う。ガルシアはジャーボンテイ・デイビス戦で初黒星を喫してからの再起戦を昨年末に行ったが、ほぼウェルター級の143ポンド(64.8kg)のキャッチウェイト契約だった。 正直、両者の試合はあり得ない話なのである。 ただ、ボクシング史には4階級差があった現役プロボクサー同士が戦った事例がある。
4階級差のスーパースター対決の前例
現代におけるこれに最も近い例は、オスカー・デラホーヤと対戦した時のマニー・パッキャオだろう。 2007年4月14日、パッキャオはスーパーフェザー級(130ポンド/58.9kg)でのWBCインターナショナルタイトル戦で、ホルヘ・ソリスを8ラウンドでKOした。3週間後、デラホーヤはフロイド・メイウェザーに1-2判定で敗れ、WBC世界スーパーウェルター級(154ポンド/69.8kg)のベルトを失った。 この時点でパッキャオとデラホーヤの体重差は24ポンド(約10.9kg)。階級が4つも違い、両者の対戦を実現させるには、あまりにもかけ離れていた。 しかし、2008年12月8日、パッキャオとデラホーヤはウェルター級(147ポンド/66.6kg)契約で対戦するに至る。試合当日はパッキャオが148.5ポンド(67.3kg)まで戻したのに対して、デラホーヤは前日計量の145ポンド(65.7kg)から147ポンドに留めた。 パッキャオは8ラウンドで試合が止められるまでの過程で終始圧倒し、デラホーヤは二度と戦うことはなかった(2021年に現役復帰が発表されたが新型コロナウイルス感染により白紙となった)。 4階級違うスーパースター同士のドリームマッチは確かに実現したが、比較対象としてガルシア vs. 井上と異なる点がある。 まず、当時デラホーヤは体が大きいにもかかわらず、29歳のパッキャオに対して4歳半年上の35歳だった。一方、井上よりはるかに大きなガルシアは、年齢でも30歳の井上より5歳下であり、この要素では明らかに有利だ。 第2に、パッキャオの俊足でボリュームのあるパンチングスタイルは、ウェイトホッピング(階級転向)に柔軟に対応できた。フィリピンの英雄がボクシング史上最も多くの階級を制覇した記録(8階級)を保持しているのは偶然ではない。対して、井上はより慎重なボクサーパンチャーであり、パッキャオをエミュレートするスタイルではない。 井上 vs. ガルシア? 残念ながら期待してはいけない話である。 ※本記事は国際版記事を翻訳し、日本向けの情報を追加した編集記事となる。翻訳・編集:スポーティングニュース日本版編集部 神宮泰暁
スポーティングニュース(原文:Tom Gray、翻訳・編集:日本版編集部 神宮泰暁)