【解説】中東に迫る危機~イラン攻撃 そのウラに潜む狙いと本音
中東の緊張が高まっています。イランが13日夜、イスラエルに無人機やミサイルを発射しました。長い対立の歴史がある両国ですが、イランがイスラエル本土を直接攻撃したのは初めてのことです。イスラエル側が報復攻撃に出れば、さらなる応酬につながる恐れも…イランが攻撃を仕掛けたウラに潜む、狙いと本音をひもときます。
■イランとイスラエル そもそもいつから対立?
両国には45年におよぶ長い対立の歴史があります。イランでは、1979年にイスラム革命が起き、西欧近代化路線を推し進めたパーレビ王朝が倒されました。 その後、イスラム教シーア派による革命政府ができ、反米、反イスラエルの姿勢を強めるようになりました。1948年にユダヤ人がイスラエルを建国した時に故郷を追われたパレスチナ人を解放するため、イスラエルと、その背後にいるアメリカと戦う、というのが彼らの主張です。 パレスチナ自治区ガザ地区を拠点とするイスラム組織ハマス、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ、イエメンの反政府武装組織フーシ派など、イランはイスラエルと敵対する組織を支援し、「抵抗の枢軸」と呼ばれるネットワークを作り上げてきました。 イスラエルは、この「抵抗の枢軸」にイランが武器や資金を援助しているとしています。その後、イランに核開発の疑惑が持ち上がると、イランとイスラエルの対立は先鋭化しました。 さらに関係が悪化したのが2023年10月のハマスによるイスラエルの攻撃が起きてからです。イスラエルは、イランがハマスの後ろ盾になっているとして非難しています。「抵抗の枢軸」によるイスラエル攻撃も目立つようになりました。 ただ、これまでイランとイスラエルが直接刃を交えるということはありませんでした。報復の応酬を招き、中東全体を危機に陥れかねないからです。では、なぜ今回に限ってイランはイスラエルへの直接攻撃をしかけたのでしょうか。
■イランが初の直接攻撃に踏み切ったワケ
直接の引き金となったのは、シリアの首都ダマスカスのイラン大使館が空爆を受けたことです。イランは『イスラエルが空爆した』として強く非難していますが、イスラエル側は認めていません。 この攻撃で、イランの革命防衛隊の精鋭7人が死亡しました。イランの革命防衛隊というのは政権の親衛隊のような軍事組織です。イランのライシ政権の中心は保守強硬派です。今回、イスラエルに攻撃した理由としては、国内向けに強気の姿勢を示さざるを得なかったのではないか、と見られています。 イランは13日夜、イスラエルに無人機やミサイルあわせて約300発を発射。イスラエル軍は99%を撃ち落としたとしており、落下した金属片で女の子1人が重傷を負った他は、死者は確認されていないといいます。 イランは今回の攻撃で、最大都市のテルアビブや人口密集地を狙わず、飛行に長い時間がかかる無人機などを使い、発射直後に攻撃を公表するなど、イスラエル側に住民の避難や迎撃ができる態勢を整える猶予を与えているようにも見えます。イスラエルの至る所にシェルターが配備されていることはイランも先刻承知のはず。このように、ある程度「抑制的」とも言えるレベルの攻撃にとどめたのはなぜなのでしょうか。