三笘薫の使い方を誤ったデ・ゼルビ監督。ブライトンの攻撃が停滞した理由とは【分析コラム】
プレミアリーグ第11節、エバートン対ブライトンが現地時間4日に行われ、1-1のドローに終わった。この試合でアウェイチームは80%のボール保持率を記録するなど、ポゼッションをすることはできていたが、シュートはわずか7本に留まった。この攻撃の停滞の理由は、三笘薫の起用法にあった。(文:安洋一郎) 【動画】三笘薫がOGを誘発!エバートン対ブライトン ハイライト
●絶不調ブライトンがプレミアリーグで5試合勝ちなし 就任2季目を迎えたロベルト・デ・ゼルビ監督率いるブライトンのプレミアリーグでの苦戦が続いている。 試合の主導権を握りながら勝ち越すことができなかったフラムとの前節に続いて、今節のエバートン戦も難しい試合になってしまった。 1週間前の試合と今節の大きな差はチャンスを作った回数だ。フラム戦は18本のシュート(枠内シュート7本)を記録したことからもわかるように、どちらかと言えば「決定力」に問題があったが、エバートン戦はその前段階である「決定機」を作ることに大苦戦。前半を圧倒的に支配されたマンチェスター・シティ戦に次ぐワーストとなる7本(枠内シュート2本)に留まった。 シティ戦に関しては、相手が自分たちを大きく上回ったことで苦戦を強いられたが、今節に関しては違う。むしろ試合を通して80%のボール保持率を叩き出すなど、多くの場面で試合をコントロールすることができていた。 この支配率とシュート数から見てもわかるように、エバートン戦ではこの2つが全く比例しなかった。なぜブライトンのボール保持が攻撃面であまり機能しなかったのだろうか。 ●三笘薫に与えられた異なる役割 18本のシュートを放った前節との大きな違いはフォーメーションだ。 フラム戦のブライトンは左SBの相次ぐ怪我人の影響もあって、最終ラインに3人のCBを並べる[3-4-2-1]のシステムで試合に臨んでいた。中央のレーンではダブルボランチとツーシャドーの4枚がポジションを入れ替えながらパスを回すことで相手に対して数的優位を作り、サイドはWBに入った三笘薫らの質で優位に立った。 “数”と“質”。この2つが両立したことで、フラム戦の3バックはチャンスを作る上で大いに機能をしたのだが、デ・ゼルビ監督はエバートン戦でこのシステムを活用することはなかった。 代わりに[4-3-3]のフォーメーションを組んだのだが、これまでとは違うアプローチで試合に臨んだ。それは左WGで先発出場した三笘を大外に張らせず、ハーフスペース付近にポジションを取らせたことだ。 指揮官としては、三笘をよりゴールに近い位置でプレーさせたかったという狙いがあったのかもしれない。しかし、この役割の変更がブライトンの停滞へと繋がってしまった。 ●ブライトンの攻撃が機能しなかった理由 実際に昨季も三笘が内側のレーンでプレーしたこともあったが、今節との大きな違いは、代わりに大外のレーンでプレーした選手の特性だ。 昨季はアップダウン型のSBであるペルビス・エストゥピニャンが、三笘の外を上下することでこのシステムが機能をしていた。しかし、同選手が怪我で離脱していた今節はインサイドハーフのジェームズ・ミルナーが大外のポジションを取った。 この37歳のベテランMFは大外で仕掛けるプレーよりも、気が利くプレーを得意としている。そのためサポート役としては最適なのだが、これまで三笘やエストゥピニャンが実行していた大外でのドリブルや仕掛けはプレーの選択肢にない。 そのため大外のミルナーにボールが入ったところで、サイドから相手にバックラインに対して圧をかけることはできなかった。一方で三笘へのパスコースは相手の中盤が消しており、前半5分の場面のようなCBがボールを持ったタイミングでの裏抜け以外で、彼に良い状況でボールが入ることはなかった。 後半にこの方法を止めて、いつも通り三笘に大外を張らせると、ブライトンは相手の右SBアシュリー・ヤングに対して1対1の局面でプレッシャーを掛けられるようになった。ラッキーな形ではあったが、日本代表FWは84分に左サイドからの仕掛けから同点となるオウンゴールを演出している。 デ・ゼルビ監督の修正はさすがだったが、ヤングに対して三笘が質で優位に立てることは試合前から予想できただろう。実際にこの元イングランド代表DFは先月行われたマージーサイド・ダービーでリバプールの左WGのルイス・ディアスに後手を踏んで退場を余儀なくされている。 この試合を分析することができていれば、コロンビア代表FWのようにドリブル突破を得意とする三笘をヤングにマッチアップさせることが有効だったことは試合前からわかっていたはずだ。 指揮官が初手のアプローチを誤ったことで、ブライトンはあわや勝ち点3を取りこぼすところだった。 得点シーンもブライトンからすればラッキー的な要素が強く、試合を通してセットプレー以外でエバートンゴールを脅かした場面は皆無に近かった。この内容で勝ち点1を拾えたことはプラスに捉えるべきだろうが、三笘の使い方を誤ったデ・ゼルビ監督の采配ミスの罪は重い。これでブライトンはプレミアリーグで5試合勝ちなしとなった。
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