日本経済への疑念が深まり、「石破新政権誕生」で日本株は停滞しかねない
ただ、次期政権が揺らぎつつある金融財政政策を立て直し、経済成長を高める政策が強化されれば、日本株は米国株と同様のパフォーマンスに再び追いついても不思議ではなかっただろう。 ここで改めて石破次期首相の金融財政政策に対する見解を、以下で整理しておこう。 財政政策について、石破氏は政策集でも「経済あっての財政との考え方に立ち、デフレ脱却最優先の政策運営を行う」としており、9月25日の記者会見でも「岸田政権の取り組みを引き継ぐ」と述べている。石破氏は推薦人を確保する過程で、経済成長を重視する政治家による政策提案を受け入れたとみられる。
一方で、石破氏は「法人税には引き上げ余地がある」と言及するなど、むしろ緊縮的な財政政策を志向し続けているのではないか。石破次期首相の本当の考えは、財務相など、10月1日以降に行われる組閣の人選によっても判明するだろう。 一方、決選投票で敗れた高市氏は、現在の経済状況における増税にははっきり反対していた。日本の財政赤字は2024年4~6月時点ですでにGDP比率2.7%まで縮小しており、先進各国の中でもかなり「健全」と言える状況になりつつある。
■民間部門への増税は経済活動への明らかなブレーキに インフレの一時的上振れと徴税基盤がしっかりしているので税収が大きく上振れているためだが、これは、特に所得回復が遅れている家計部門の税負担が大きすぎることを意味する。 この点がコロナ禍後の日本の経済成長の足かせになっているのだから、民間部門への増税は経済活動にブレーキをかけるのは明らかである。筆者は、高市氏が経済・財政の状況を、石破氏や小泉氏よりも正確に理解していたと評価している。
また、金融政策の経済成長に及ぼす影響は、財政政策より大きいので極めて重要だが、金融政策について自らの考えを、はっきり示しているのは高市氏のみだった。「基調的なインフレ率が2%以下に低下しつつある中で、日銀は利上げを慎重に行うべき」との考えを述べていた。筆者は同様の見方を持っており、7月末の日銀の利上げ判断は適切ではなかったと考えている。 渡辺努・東大教授が述べているように、「テーラールール」など基本的な政策反応関数を前提にすれば、インフレ想定の上振れに応じた利上げは正当化される。