風間杜夫、シリーズ8作目のひとり芝居で動き回り歌いまくる。その軽やかさに刮目せよ!
“面白そう!”を原動力に
──そもそもこのシリーズが始まったのが27年前。そのときはどんな気持ちでこのひとり芝居に挑戦しようと思われたのでしょうか。 挑戦というような気持ちはなかったです。ただただ面白そうだなと思ってやっただけで、ここまで続くとは思っていなかったんです。それがまた来年やろうとか言っているうちに、あっという間に第5部まで続いて。そのときに主人公が60歳を過ぎたので一旦封印したんですが、別のひとり芝居の三部作を水谷さんとやっているときに、「牛山明はどうしているだろうね」という話になって。それで水谷さんに「ちょっと書いてよ」と言ったところ、『帰ってきたカラオケマン』として、70歳を過ぎた牛山明が帰ってきて、今、3本目を迎えているというわけです。水谷さんとは、どんどんやっていこうという話はしているんですけどね。80歳、90歳と、命ある限り、体が動く限り、続けていこうと。 ──膨大なセリフを覚え、見えない相手と芝居をするひとり芝居の大変さについては、ご苦労はありませんか。 ずっと続けてきているから、セリフを覚えるコツもだんだん身についてきました。スタッフも大半が第1部から変わっていないので、のびのび稽古ができますし。そうするといろいろアイデアも出てきて、くだらないことをやっている中で、本番に採用されるものもいくつか出てくるんですね。脚本について、「ここはこうしたほうが歯切れが良くなるんじゃないか」とか、意見も気楽に言えますし。苦労よりも楽しいことのほうが多いんです。 ──ひとり芝居以外にも、近年とくに、翻訳劇、現代劇、ミュージカル、新派、テント芝居など、あらゆるジャンルの演劇に出演しておられます。その意欲はどこから生まれているのでしょうか。 これもただただ面白そうだな、やってみたいなと思うだけなんですよね。新しいことをやろうという気負いはあまりなくて、面白がりたいんです。あのテントに立ったら面白いだろうなと思ってそこへ行ったら、本当に面白いですしね。外れたことはほぼないです。 ──今後さらに面白がれそうなことって何かありそうですか。 テント芝居の唐十郎の世界もまだまだ面白そうですし、『女の一生』で森本薫の素晴らしい戯曲に出会いましたが、そういう日本の古い芝居ももっとやってみたいです。 ──そういえば、風間さんは落語もやっておられますし、今回の『カラオケマン』では、牛山明の得意な歌である三波春夫の「俵星玄蕃」で浪曲の節回しも披露されます。 この「俵星玄蕃」は、知人によく歌わされていて、体に染み付いているんです(笑)。落語では都々逸を歌ったりもしますし。けっこう和風の楽曲は耳に馴染むというか、自分に合っているのかもしれません。 ──その意味では、日本の良きものを届けてくださることにも期待したいですが、ご自身では、舞台に立つからには、どんなものを届けたいと思っておられますか。 もともと子どもの頃からごっこ遊びが好きで、チャンバラごっこやままごとをやっているのと同じように、演じることを楽しんでいるんですね。だから、僕が軽やかに楽しんでいるところを観ていただいて、お客さんも軽やかな気持ちでその時間を過ごしていただけたら、それに勝るものはないなと。『カラオケマン』なんてまさしくごっこの世界ですし。軽やかに楽しんでいただけたら何よりです。 取材・文:大内弓子 <公演情報> 風間杜夫ひとり芝居 『カラオケマン ミッション・インポッシブル ~牛山明、バンコクに死す~』 作・演出:水谷龍二 出演:風間杜夫 【東京・本多劇場公演】 2024年10月11日(金)~10月17日(木) 会場:本多劇場 ■アフタートーク 10月13日(日) 14:00終演後 登壇者:風間杜夫、水谷龍二(作・演出)、岡田潔(プロデューサー) 司会:岸田茜 10月15日(火) 19:00終演後 登壇者:風間杜夫 ゲスト:柴田理恵 【その他公演】 2024年9月27日(金) 会場:北海道・苫小牧市文化会館 2024年10月3日(木) 会場:神奈川・ひらしん平塚文化芸術ホール 大ホール 2024年10月6日(日) 会場:東京・江戸川区総合文化センター 小ホール