風間杜夫、シリーズ8作目のひとり芝居で動き回り歌いまくる。その軽やかさに刮目せよ!
27年前にスタートした風間杜夫のひとり芝居シリーズ『カラオケマン』。第8部となる今回は、初の海外編として、風間杜夫演じる牛山明が、75歳にして大冒険に出る。これまで以上に体を張ることになりそうな最新作に、風間はどう飛び込んでいるのか。その気負いのない姿に、演劇というものの楽しさが映る。 【全ての写真】シリーズ8作目のひとり芝居への意気込みを語る風間杜夫
ライバルはトム・クルーズ!? 牛山明、肉体の限界に挑む!
──ひとり芝居の『カラオケマン』シリーズの第八部が、昨年の第七部に続いて上演されます。タイトルは『カラオケマン ミッション・インポッシブル~牛山明、バンコクに死す~』。企画を聞かれたときは、まずどう思われましたか。 脚本・演出の水谷龍二さんから話を聞いたのはいつ頃だったか、たぶん、去年の本番をやっている頃には、「来年も新作をやろう」とおっしゃっていた気がします。そのときにはもう、主人公の牛山明が海外に行った元部下を探しに行って彼を助け出すという構想もあったみたいで。それで、誰が言い出したか、タイトルも、「ミッション・インポッシブル」となりました、一応アクション巨編です(笑)。もっと若ければ飛んだり跳ねたりするところですけど、後期高齢者で肉体の限界があるので、さてどうなりますか。 ──どのくらい体を張ったお芝居になるのでしょう。 キックボードに乗ったり、悪い奴らに捕まって拷問を受けたり…限界までは頑張ってみようかと。一応はね。やっぱり、トム・クルーズをライバルとしていますから(笑)。 ──この公演に向けてやはりトレーニングをされているのでしょうか。 いや、それがまったく何もしていないんです(笑)。今年の夏は猛暑でウォーキングも中断しましたし。それでもまあ、これまでのシリーズもそこそこキツかったですから。頑張れるのではないかと思っています。 ──それにしても、ここへきてシリーズ初の海外編が企画され、牛山明が命の危機にさらされるとは思いませんでした(笑)。 何しろコメディですから、どんなところにも飛躍できるんです。それがこの作品の面白いところで。これまでも牛山は、大衆演劇の一座に入ったり、ホームレスと交流したり、選挙に立候補してみたり、観光ガイドをしたり、いろんなことをやってきました。 ──改めて、牛山明とはどんな人ですか。 平凡なサラリーマンで仕事や家庭に悩み、大好きなカラオケで憂さを晴らしていたんです。でも、あるとき記憶をなくしたことをきっかけに、いろんなところを転々とするようになって、人と出会ったり別れたりする人生を送っている。仕事は、自分の特技の歌を活かして行く先々で見つけては何とかやっていて、今回も、歌う結婚式場の司会者をやっているという設定になっています。そして、自分でも言ってますけど、お調子者なんですよね。人に乗せられたり、頼まれたり、何かっていうと「よし、じゃあ俺がやってやろうじゃないか」と発奮する。そうやって今回もバンコクまで行くことになって、ぶつぶつ愚痴を言いながらも何とか決着をつけるんです。だから、別に際立って正義感が強いとか、そういう立派な人じゃないんだけど、いい人であることは確かだし。皆さんにも共鳴できるところがあるんじゃないでしょうか。定年のない人生を送っている自由人という意味では、私たち役者とよく似ていますね。