生死を超える日本的美学の具現「アイミタガイ」に〝日本はIP産業のエルドラド〟を実感
コンテンツ産業を国家戦略産業に育成し、2027年に世界4大コンテンツ強国に跳躍するという政府の発表。このため、映像コンテンツ産業の規模を27年までに約4兆4000億円以上に拡大し、キラーコンテンツの創出のため、28年までに1100億円以上の戦略ファンドを新設し、エミー賞、アカデミー賞など主要海外授賞式の受賞作を5年間で5本創出すると韓国文化体育観光省が発表した。昨年11月14日、ソウルのモドゥ芸術劇場で発表した映像産業跳躍戦略の内容である。就任後初の政策発表に乗り出したのは大臣の柳仁村(ユ・インチョン)で、筆者の先輩であり恩師でもある。彼とはただこの関係性だけでは説明が足りない縁がある。 【写真】インタビューに答える「アイミタガイ」主演の黒木華
恩師の一言
かなり長い話を最大限簡単に言うと、そもそも筆者と彼との出会いは筆者の突発行動が原因だった。国際関係の研究者になることを願った父の意に逆らい、アメリカの大学院の入学許可を受けた状況で決行した演劇映画学科の学部進学。自業自得というか代価は苛酷だった。20代半ば、同期生よりおよそ5、6歳上だった私だが、自立といえばまだ子供に過ぎなかった筆者。年を取るほど遅れているという自責の念とともに、中途放棄の誘惑から脱することができなかった。 そうして夜明けに作成した退学届が入ったリュックを背負ったまま参加した期末公演のアフターパーティー。そんな筆者の顔から一抹の不安を感じ取ったのだろうか。柳先生は卒業に10年かかった自分の大学時代の話を始めた。「新卒採用を目標とする学科ではなかったことは、すでに分かっていたではないか。途中放棄は自分の選択が間違っていたことを認めることだ」という言葉で終わったまたとないの忠告。大事な縁。誰でもひとつくらいは持っている。さらには当事者たちが世の中から消えた後も生き残って、誰かに伝承される話。
日本はIP産業のエルドラド
面白いことは、釜山国際映画祭で親友の佐藤信介と共に彼の代表作をプロデュースしたもう一人の親友、辻本珠子の紹介であいさつを交わし、ひときわ優しく人の良さそうなプロデューサーの宇田川寧の正式出品作「アイミタガイ」によって、競争力のあるストーリーを見つけるビジネスに国の命運をかける恩師の構想を思い浮かべるようになったということだ。 読者の皆様には「なんというとんでもない話か」と指摘する前に、どうか考えていただきたい。場合によっては莫大(ばくだい)な予算を投入して数多くの専門家たちが精密な計画を立ててこそ確保できるストーリーが日本の映画業界には散在している。そうではないか。国境を越えて数多くの読者を泣かせ、その原作が映画化されることを待ち、再び劇場を訪ねて泣かせようとする数え切れないストーリーを見てみよう。浅田次郎や東野圭吾のような「世紀の宝物」まで言及する必要もない。みんなの想像を超える原作が数え切れないほど多いのだから。IP(知的財産権)産業という専門的な名称で呼ばれる現代の基準で言うと、日本列島は「IP産業のエルドラド(昔、スペイン人が南米アマゾン河畔にあると想像した黄金郷)」である。