新型ロールス・ロイス カリナンは異次元だ! 4000万円オーバーの超高級SUVの進化とは
ロールス・ロイスのプロダクトポリシー
実際に、6.75リッターの12気筒エンジンによる420kWの最高出力と850Nmの最大トルクのパワー感と、超フラットな乗り心地という、シリーズⅠの長所はそのまま受け継がれている印象。くわえてカリナンのよさは、ステアリングにダイレクト感がしっかりあって、ドライブが楽しいところだ。 クルマのドライバビリティは、パワーとトルクとステアリングフィールと乗り心地、それに音など、さまざまな要素から成る。そうやって出来上がったカリナンのキャラクターは、ほかで手に入らない。フェラーリ「プロサングエ」とも違うし、アストンマーティン「DBX707」やメルセデス・マイバッハ「GLS」とも一線を画している。そもそも「クルマの世界でライバルは存在しません」というのがロールス・ロイスのプロダクトポリシーなのだ。 イビサ島のサンジョアンなる海岸沿いのリゾート周辺が、今回の試乗コース。海岸線と、そんなに高くない山を縫うワインディングロードと、それにハイウェイ。日本でもありそうな、組合せだった。 車幅をもてあます場面もごくたまにはあったが、なにより印象に残ったのは、ワインディングロードでの意外なほどきびきびとした動きと、高速での快適性。後輪操舵システムをそなえているのと、ステアリングが正確なので、道を選ばず、気持ちよく走れる。 23インチホイールとの組合せで、扁平率が40%と薄くなったタイヤは、コーナリングにおけるしっかり感に寄与しているのだろう。かといって、乗り心地が悪化していない。ていねいに設定している印象だ。 よりスポーティなドライビングが好きなひとのために、同時にブラックバッジ・カリナン・シリーズⅡも発売された。ロールス・ロイスの顧客の年齢を引き下げるのに、ブラックバッジの貢献度は大きいという。 クロームの部分がグロス(ツヤあり)ブラックになり、パンテオングリルも、なんとスピリット・オブ・エクスタシーもブラック。エンジンパワーは、最高出力が441kW、最大トルクが900Nmに引き上げられている。 さらに、足まわりがすこし硬く、ステアリングの操舵力は重めになっている。こちらのほうがちょっとスポーティで好み、とするクライアントも少なからずいる、と説明する前出のプロダクトスペシャリストのケンザ・サーディの言葉に納得できる仕上がりだ。 日本での価格は、カリナン・シリーズⅡが¥46,454,040、ブラックバッジ・カリナン・シリーズⅡが¥54,154,040。仕上げのパッケージオプションは豊富で、自分仕様の内外装を注文して、時間をかけて仕上げていく楽しみを味わうのも、きっと格別だろう。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)