子どもとの約束をドタキャンした夫「予定を忘れて…」背後にひそむ思わぬ“病”とは<漫画>
『夫がわたしを忘れる日まで』(KADOKAWA)は、40代で若年性認知症と診断された夫を支える妻の姿を描いています。 【マンガ】仕事を理由に子どもとの予定を前日キャンセルした夫だったが実は…『夫がわたしを忘れる日まで』を読む 著者の吉田いらこさんの父親が脳に障害を負った経験を元に創作されたセミフィクションです。 今回は本作からプロローグと1~3話を紹介、仕事を理由に子どもとの予定を前日キャンセルした夫でしたが、背景には事情…というエピソードが描かれます。後半は吉田いらこさんに、執筆のきっかけや、若年性認知症の患者さんや家族の困りごとなどについて聞きました。
娘の立場から「妻の視点」へ
――今回の作品は、妻の立場から若年性認知症の夫を支える姿が描かれています。吉田さんは子どもの頃に、お父様が脳に障害を負い、お母様が介護される姿を見てきたそうですが、違う視点から執筆したことで気づいたことはありましたか? 吉田いらこさん(以下、吉田):自分が子供だった頃は、父の病気のことはただ傷ついていればよかったんだなと思いました。 妻は子供の保護者側の立場なので、夫の看病だけでなく、子供のことも考えなければならないので責任が重く、本当に大変だと感じました。 ――執筆にあたって、お母様に当時のことを聞いたりしたのでしょうか。 吉田:当時は、母は子供に詳しい病状などをあまり話さなかったんです。だから今回、どういう経緯があったのか、具体的にどんな手術をしたのか、細かいことを改めて教えてもらいました。 ――お母様のお話で特に印象的だったことはありますか? 吉田:医療費がいくらかかったのかは大人になってから初めて教えてもらいました。今になって、「どれだけ大変だったんだろう」というのが少し分かるようになりました。 また、行政のサポートやサービスに関しては何があるのか全然分からなかったので、どんな援助を受けられるのか祖父母も協力して探してくれたそうです。
「テレビをみているみたい」現実感がなかった
――セミフィクションにした理由はあるのでしょうか? 吉田:編集者の方が、私が以前Twitter(旧)にアップした父の病気の漫画を見て、「若年性認知症をテーマに、フィクションとして妻の視点から描いてみませんか」とオファーしてくださったんです。 私としても「フィクションの方が誰にも遠慮せずに描けるかな」という気持ちがありました。そのまま父の話として描くと、「こう描いたら母や妹が傷つくかな?」と考え込んでしまったかもしれません。 ――若年性認知症の初期症状で、頭痛や物忘れが激しくなる描写がありましたが、実際に起こることなのでしょうか。 吉田:初期症状の頭痛については、父の経験をそのまま描きました。父は「頭が痛い」というのを1番強く訴えていました。 当時は仕事がすごく忙しくて「ストレスが酷い」と聞いていたので、頭痛もそのせいなのかと思い、病気の発覚が少し遅れたのかもしれません。 物忘れについては、父の場合は初期症状としては全然ありませんでした。そこは若年性認知症の症状について資料を調べて描きました。 ――お父様が病気を告知された時の記憶はありますか? 吉田:今振り返ってもすごく不思議なのですが、テレビを見ているような感覚でした。 母から病名や、「これからもっと酷い病状になるかもしれない」とは聞いていたのですが、それを知ってもどこか他人事のような気がしていました。現実感がなく、私はなかなか受け入れられなかったです。 ――ご自身のなかで受け入れられたのはいつごろだったのでしょうか。 吉田:2、3年はかかったかもしれません。毎日を過ごすなかで、「これは現実なんだ」と、ゆっくりと諦めがついていきました。