液化した二酸化炭素を船で輸送 協議会設立に30社が参加
経済産業省は「LCO2船舶輸送バリューチェーン共通化協議会」(座長=尾崎雅彦・東京大学名誉教授)を立ち上げる。8月下旬に1回目の会合を開く予定だ。CO2(二酸化炭素)の排出者や貯留事業者のほか、海運・造船会社など約30社が参加し、船陸間の整合性や船型などの仕様の共通化を議論する。2024年度内をめどにガイドラインを作成し、30年度のCCS(CO2回収・貯留)事業の社会実装につなげる狙いだ。 共通化協議会はエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に設置される。CO2の排出者や貯留事業者、プラントエンジニアリング事業者、商社などで構成。海事業界からは日本郵船、商船三井、川崎汽船、上野トランステック、日本ガスライン、三菱造船、日本シップヤード(NSY)が参加する。 CCSは製鉄所や発電所などCO2を含むガスの排出源からCO2を分離・回収し、輸送、貯留する技術を指す。カーボンニュートラル(CN)社会を実現するための中核技術と見なされ、CO2の削減が困難な産業で実用化に向けた取り組みが加速している。 日本でCCSを社会実装するには、排出源から貯留地までの大容量のCO2の船舶での長距離輸送が欠かせない。そこで経産省は共通化協議会を設置し、液化CO2(LCO2)の効率的で低廉な船舶輸送バリューチェーンの構築を支援する。 液化CO2の船舶輸送を巡っては、仕様を一定程度共通化することが重要になる。輸送コストの低減のほか、払い出し・受け入れの柔軟性を確保し、造船や舶用機器のサプライチェーンも構築する必要があるためだ。 共通化協議会の中に二つのワーキンググループ(WG)を設置し、船陸整合やCO2の性状など、液化CO2タンクシステムや船型などを、それぞれのグループで議論する。 共通化協議会は今年12月までに3回程度開催する。8月下旬に第1回目の開催を予定する。来年3月までに結果を取りまとめ、液化CO2の船舶輸送を含むサプライチェーン構築の指針となるガイドラインを作成する。 経産省とJOGMECは6月に、30年までの事業開始を目指すCCS事業9件を「先進的CCS事業」として選定した。共通化協議会が作成するガイドラインは、先進的CCS事業の各プロジェクトでの活用を目的としている。 共通化協議会には海事業界以外では、伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、石油資源開発、INPEX、JX石油開発、関西電力、中部電力、ENEOS、コスモ石油、日本製鉄、JFEスチール、太平洋セメント、大阪ガス、日揮、千代田化工建設、三菱重工業、TBグローバルテクノロジーズ、日本液炭、日本CCS調査、エンジニアリング協会などが参加する。 事務局はPwCコンサルティングが務める。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や地球環境産業技術研究機構(RITE)などがオブザーバーとして参加する。 経産省が所管するNEDOはCCSの社会実装に向けて、液化CO2船舶輸送技術の確立にも取り組んでいる。昨年11月には世界初の液化CO2の低温・低圧輸送に対応した実証船「えくすくぅる」が竣工。今年10月から苫小牧―舞鶴間で実際の輸送試験を行い、26年度までに運航技術の確立を目指している。
日本海事新聞社