<独自>「通天閣」が身売り検討 相手は南海電鉄が有力 急増する訪日客への対応に資金力
大阪・新世界の観光名所「通天閣」を保有・運営する通天閣観光(大阪市浪速区)が身売りを検討していることが7日、分かった。南海電気鉄道などとの間で交渉を進めている。通天閣は新型コロナウイルス禍の収束を受け、訪日客などの入場者が急激に回復。必要な設備投資などを行い長期的に発展するには、より資金力のある企業のグループに入ることが必要と判断した。 【写真】地上40メートルからダイブ! 観光客誘致へ「通天閣」で運用が始まった体験型アトラクション「ダイブ&ウォーク」の「ダイブ」 複数の関係者が明らかにした。通天閣観光は自社の株式を売却し、保有する通天閣とその運営権を譲渡する。売却額や時期は検討中だが、額は数十億円程度になるとみられる。 足元では訪日客などの回復を受け、2023年4月~24年3月期はコロナ禍前を超える約137万人が入場した。 時間帯に応じて入場料金を変動する施策の検討などを進めているが、来場者の急増に対処するインフラ整備を単独で行うことが難しくなっている。 周辺地域への経済波及効果を高める開発を目指すうえでも、資本力のあるグループに入ることを有力な選択肢とみなしている。 身売り先として有力視される南海は、通天閣に近い難波―新今宮駅を起点とした沿線開発計画「グレーターなんば」構想を掲げる。今年10月末には不動産事業を担う親会社のもとに鉄道運営会社を置く分社化を発表するなど、不動産開発を軸に置く戦略を描いている。通天閣を傘下に置いて運営することで、沿線開発にも弾みをつける考えだ。 初代通天閣は1912年に娯楽施設のシンボルタワーとして建設された。43年、足元の映画館の火災に巻き込まれて解体。55年には再建に向け地元の人々の出資で通天閣観光が設立され、翌56年に現在の2代目通天閣が建設された。 最近も2022年に地上22メートルから地下1階までらせん状の滑り台を降りる「タワースライダー」をオープンするなどして話題を呼んだ。(黒川信雄)