『極悪女王』ゆりやんのアメリカ進出に数々の布石が 「ゾクゾクさせてくれや」渡辺直美と共通する実験精神
渡辺直美との共通点
渡辺とゆりやんに共通するのは、イメージを具現化する力ではないだろうか。今年8月に放送された『スイッチインタビュー』(NHK Eテレ)の「ゆりやんレトリィバァ×西剛志」EP1の中で、ゆりやんは自身がお笑いに目覚めた幼少期をこう振り返っている。 「私8歳のときに『吉本に入って芸人になりたい』って思ったんですよ。(中略)『なりたいな』『なれたらいいな』じゃなくて、『私お笑い芸人になるんだ』って思い描いたし、それを疑いなく『私は芸人になるもんなんだ』っていう。おごりではなくてナチュラルに『木曜日の次は金曜日になるんだ』みたいな感覚やったんですよ」 自分の感覚を信じて実行する姿勢は、芸人になってからも同じだ。昨年11月に放送の『情熱大陸』(TBS系)では、単独ライブの本番30分前に披露するネタを考え、8分前に食事するゆりやんの豪胆さが見られた。 また、ライブの舞台監督を務めるスタッフがゆりやんの芸風について「自分の感性だけって感じがしますね。お客さんに理解させようとかそういうことではなく、私はこれが面白いんだっていうことの追求な気はするんですけどね」と語っていたのが印象深い。 一方の渡辺は、アメリカのファンと全編英語でトークするPodcastの冠番組『Naomi Takes America』(2022年2月~)をスタートさせるにあたって、自身のアドリブトークにこだわったという。渡辺の英語力を心配したスタッフから「台本あったほうがいいんじゃない?」と提案されたが、彼女は「台本ないほうが絶対面白いから」と押し切り、“英語力のなさを生かしたトーク番組”として人気を獲得していった。<2022年6月に放送の『しゃべくり007』(日本テレビ系)より> そんな渡辺の背中を追いかけるゆりやんもまた、チャレンジ精神と好奇心にあふれている。前述の『情熱大陸』の中で、ロサンゼルスにあるコメディ専門の小劇場でスタンダップコメディーのオーディションを受けた後のゆりやんの言葉が忘れられない。オーディションには合格したものの、爆笑を起こしたとは言い難い現実を受け、彼女は高揚した表情でこう語った。 「ぜんぜんウケないこととか、とんとん拍子に進んでないこととか……いいですね、これです。これこれ、この感じだよって思います。ゾクゾクさせてくれやって思いますね」 彼女の言う「ハリウッドスター」になれるかは未知数だが、彼女にアメリカのフロンティア・スピリットにも似たバイタリティーがあるのは、間違いないだろう。