宇良の取組でファンが起こした“異例”の事態 前日にも観客の振る舞いに批判が ファンのあるべき姿とは
<大相撲九月場所>◇十四日目◇21日◇東京・両国国技館 力士の真剣勝負による熱戦が続く国技館。十四日目の宇良の取組では、立ち合う直前に四股名を叫ぶ大きな声が響き、直後に熱海富士と宇良が立ち合いを仕切り直す異例の事態に館内が騒然となった。前日にも行司の掛け声に被せるように「はっけよい」の声が響き、真剣勝負を見守る客席から失笑が漏れる一幕があった。力士の真剣勝負を楽しみ、応援するはずのファンのあるべき姿とは。 【映像】宇良の取組で起こった「異例」の事態 十三日目を終え9勝4敗の宇良は、十四日目の取組に10勝を挙げて技能賞を受賞した令和三年十一月場所以来、じつに17場所ぶりとなる二けた勝利をかけて臨んだ。その大事な立ち合いでそれは起こった。両手を下ろし、準備万端の熱海富士。宇良も腰を下ろし、右手をついていよいよという緊張感が高まるタイミングで、一人の男性の「うらーーー!」という大きな掛け声が響く。これに反応した宇良は左手をつくのをやめ、この間を嫌った熱海富士が立ち上がって仕切り直しに。宇良は熱海富士に右手を前に出して謝罪。さらに正面の審判長に頭を下げた。 十三日目にも観客の掛け声が批判を呼ぶケースがあった。三段目二十二枚目・周志(木瀬)と三段目十九枚目・栃登(春日野)の一番。ともに3勝3敗で勝ち越しの命運をかけた一番、立ち合いぶつかり合ってから一進一退の突き押しを繰り広げ、やや半身の体勢で組み合ってこう着状態に陥った。攻めあぐねている両力士の様子に、行司から「はっけよい」の声が。さらに館内からは拍手が送られたが、突如、行司の掛け声にかぶせるように客席から「よ~い!はっけよ~い!よい!」と叫ぶ酔っ払った男性のような声が館内に響いた。思わぬ出来事に、他の観客は呆れ返ったような失笑が漏れた。 相撲人気の高まりは大いに歓迎すべきだが、力士の真剣勝負に水を差す行為は控えるべき。ゴルフでは選手がボールを打つ際に「お静かに」といった札が掲げられる。最高のパフォーマンスによる真剣勝負を期待し、楽しみたいなら、拍手や歓声などファンの観戦には節度とタイミングというものがあるはずだ。力士同士の激しいぶつかり合いがあるからこそ、立ち合い直前の張りつめた静寂もまた一興である。 話を戻して十四日目の宇良の取組。仕切り直して立ち合いは成立。熱海富士が鋭い出足で宇良を圧倒すると、宇良は左からいなされ、大きく体勢を崩して“らしさ”を見せることなく押し出されて5敗目を喫した。熱海富士の相撲は速く、力強かった。一方で、少なからず「あの掛け声の影響が…」と思えてしまうことが残念でならない。あのとき、宇良の四股名を叫んだ観客が、宇良のファンであるとすればなおさらである。宇良は千秋楽で10勝4敗と好調の若元春と二けた勝利をかけて対戦する。(ABEMA/大相撲チャンネル)
ABEMA TIMES編集部