2人の強く深い絆。旅立つ松木玖生の姿を見て、安斎颯馬に芽生えた感情「新たなステージで、また一緒にサッカーがしたい」
新潟戦の25分間、息の合った連係を披露
親友であり、ライバルであり、指標となる存在。それが昨年、ついに同じステージでプレーすることが実現した。今年は前述した通り、プロ契約して正式なチームメイトになると、J1第6節の浦和レッズ戦で右サイドハーフとしてスタメンの座をガッチリと手中に収めたことで、2人のコンビネーションがプロの舞台で多く見られるようになった。 安斎がプロ初ゴールをマークした第18節のジュビロ磐田戦の時には、松木がゴールを決めた直後の安斎と抱き合い、さらに自陣に引き上げる際にもう一度抱き合うなど、我ことのように喜びを爆発させていたのも、2人の絆の深さを知り得る出来事であった。 「特別指定の時から玖生の苦労や凄さは分かっていたつもりだったけど、正式にプロになってから、より彼が背負うものの重みを痛感しました。あの若い年齢でこのチームを引っ張っていくことは想像以上に大変だったと思いますし、弱音を吐かずに先頭に立っていて、本当に素晴らしい選手だなと改めて思いました」 だからこそ、冒頭に記したように、松木とのこの半年間は当たり前だったが、実は『尊い時間』だった。この言葉を聞いただけで、その時間の濃さと思いの深さは相当なものがあったと感じ取れる。 時間を新潟戦に戻す。スタメン出場した安斎は61分に松木が投入されると、笑顔で迎え入れ、自身が交代する86分までの25分間、同じピッチで息の合った連係を見せた。そして試合後、多くの思い出を噛みしめながら、松木が送り出される光景を見つめていた。 「玖生を見て、『ありがとう』と『これからも頑張れ』という気持ちでいっぱいでした。同時に『新たなステージで、また一緒にサッカーがしたい』という気持ちも芽生えています。だからこそ、僕はこれからもFC東京で試合に出続けて、勝利に貢献することを目標として、一歩ずつしっかりとやっていきたいと思います」 親友の旅立つ姿に深い愛情と尊敬の念だけではなく、触発をされて、安斎は松木のクラブに対する意思を受け継いで真っ直ぐに突き進んでいく。将来の大きな夢を抱きながら。 取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)