<新風・21センバツ上田西>スタッフ紹介/中 矢沢龍一部長 不完全燃焼糧に 準備周到 /長野
「甲子園には縁のない人間だと思っていました」。2016年に就任した上田西の矢沢龍一部長(32)は、選手時代を通じて初の甲子園。待ちわびた夢舞台に足を踏み入れる。 同校で主将を務めた高3春の県大会で優勝。夏も優勝候補と目されたが、前評判の高さがあだとなった。「浮かれて、どんどんチームが壊れていくのを肌で感じた。何をどう修正すればいいのか全然分からなかった」。チームの仕上がりに自信が持てないまま臨んだ夏の地区大会は3回戦でノーシードの松代にまさかの敗戦。「力はあった代だったと思うが、全然それを発揮できなかった」。悔いを残したまま高校での野球生活が終わった。 時は流れて日大4年の秋。野球からは離れて東京の一般企業から複数の内定を得ていたが、母校から指導者として声が掛かった。「どうしても甲子園に行きたいから上田西に入ったけど(高校)3年間では届かなかった。選手として行けなかった甲子園に、指導者として行けるチャンスがあれば」。かつての甲子園への思いが再燃し、同校に着任した。 着任後は硬式野球部コーチを務めた後、12年から軟式野球部監督に就任。15年に全国ベスト4に進出した実績が評価され、翌16年に硬式野球部長に就任した。選手や監督らが野球に集中できるよう、グラウンドを離れて学校や保護者、外部との調整役を担う。新型コロナウイルス禍の中で「こういう状況でも生徒が一生懸命野球ができる環境をつくってくれている方々への感謝の気持ちを忘れないでやっていきたい」 コロナ禍での大会とあって、出場が決まっても気は一切緩めない。「まずは無事に大会に参加できる状態にチームを持っていかないといけない」。不完全燃焼に終わったあの夏を糧に、まだ見ぬ聖地に向けて周到に準備を進める。【皆川真仁】