消費市場の中核が高齢化、Z世代の取り込みに走る米小売企業
小売企業に必要な解決策は
一方、全米の消費者資産はベビーブーム世代とX世代に集中している。これらの世代はあまり成長が期待できず、高齢者の医療・介護への出費が増えている。 若年層の消費支出は新型コロナウイルス感染症のパンデミックや学生ローン、住宅費の高騰によって圧迫されている(ただし、パンデミック時に実家に戻ったことで可処分所得が増えた人たちもいる)。 では、小売企業に必要な解決策は、若い消費者の取り込みを図ることなのだろうか。 それは解決策の1つになるかもしれないが、若年層の消費者は移り気な傾向にある点を認識しておくべきだろう。彼らは親世代が好むブランドとは違う、新しい商品や体験を探している。驚きを求めており、新鮮でユニークな、同世代の注意を引く何かを見つけたいと思っている。 しかも、今日の若い消費者はテクノロジーに精通している。 ソーシャルメディアを使いこなし、ポップアップのデジタルストアを展開して、数日あるいはたった数時間で小売企業の実店舗に匹敵する莫大な売上を達成する20代の話をよく耳にする。 小売業界がセルフレジのような基本的なサービスの導入であたふたとしている中で、TikTokで商品を売り込む才気あふれる若い世代に立ち向かうにあたって、従来の小売企業にどのような対抗手段があるだろうか。 長い目で見れば、企業が失敗するか成功するかは時代を超えたいくつかの戦略にかかっている。百貨店を経営したマーシャル・フィールドは1900年代にこう言った。「正しかろうが間違っていようが、顧客は常に正しい」「女性客が望むものを提供せよ」。顧客の声に耳を傾けるだけでよい、というのは明白に思える。 顧客にフォーカスしなければ、成功も失敗も、制御不能な人口動態や文化傾向に振り回されてしまう。実際、Toys R Us(トイザらス)やBed Bath & Beyond(ベッド・バス&ビヨンド)など、一世を風靡したブランドが顧客にフォーカスし損ねたことで経営破綻に追い込まれた事例はいくつもある。
Greg Petro