円高・株安傾向を増幅する米国景気減速懸念(7月米雇用統計):R-word(リセッション)が意識され始める
急速な円高・株安は日銀金融政策や国内政治情勢にも影響か
景気後退も意識され始めた2日の米国市場で、米国株の大幅下落とドル安円高が進んだことから、週明けの東京市場も株価の大幅下落の流れが続くとみられる。 今まで日本では、円安傾向が企業収益の追い風となって株高をもたらす一方、円安による物価高懸念が個人消費を悪化させるなど、2極化が生じていた。今後、米国景気減速にも後押しされて円高・株安が緩やかに進行する場合には、個人消費には総じて追い風となり、2極化は解消されていくだろう。 しかし、急速な円高・株安となる場合には、個人消費も含めて日本経済全体に強い逆風となる。米国景気後退懸念が浮上し始めたことで、急速な円高・株安のリスクは徐々に高まってきている。急速な円高・株安となる場合には、今年12月と見込まれる日本銀行の追加利上げの時期が先送りされ、また、政策金利の到達点が、現時点で予想される0.75%を下回る可能性も出てこよう。 そして注目したいのは、株価下落が政治情勢をさらに不安定化させる可能性がある点だ。新NISAで初めて日本株投資に乗り出した個人の中には、株式投資のリスクや投資の自己責任の認識が必ずしも十分ではない投資家も含まれる。今回の株価の大幅下落で、新NISAなどを通じて広く国民に投資を呼び掛けてきた政府へ不満を持つようになる可能性があるのではないか。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英