【devcom】ヨーロッパ最大規模のゲーム開発者カンファレンスのいまとこれからをキーパーソンに聞く。gamescomとの組み合わせで唯一無二の存在感を放っている【gamescom 2024】
2024年8月21日~25日の5日間にわたって開催され、世界中のゲームファンから注目を集めたgamescom 2024。その模様はファミ通.comでもリポートしているが、gamescomとの併催という形で、もうひとつのイベントが実施されている。devcom Developer Conferenceだ。 【記事の画像(9枚)を見る】 gamescomの開催前の2日間に行われるdevcom Developer Conferenceは(今年は8月19日と20日に実施)、“ヨーロッパ最大”と謳われるゲーム開発者のためのカンファレンス。2017年に第1回目が行われて、オンラインも含めると今年で7回目の実施となる。参加対象はゲームクリエイターや業界関係者で、会場はgamescomと同じくドイツ・ケルンメッセとなる。 GDC(※1)やCEDEC(※2)と同じく、クリエイターの講演や技術交流の場となるdevcom Developer Conferenceだが、ひとつの特徴となるのがgamescomとの併催であること。本稿のインタビューでも答えている通り、クリエイターはdevcom Developer Conferenceに出席してgamescomに参加することで、濃密なゲームウィークを過ごすことができるのだ。 ※1:GDC……ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス。毎年3月にアメリカ・サンフランシスコで開催される世界最大規模のゲーム開発者向けカンファレンス。 ※2:CEDEC……コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス。ゲームに関する技術や知識を共有する国内最大級のカンファレンス。 そんなgamescomとの親和性も相まってか、devcom Developer Conferenceは年々来場者を増やしており、今年2024年は前年比45%増の5000人の参加者を記録したという。 今回、gamescom 2024への取材に合わせて、devcom Developer ConferenceのPress- & Community RelationsであるRobin Hartmann(ロビン・ハートマン)氏にインタビューをする機会を得た。devcom Developer Conferenceについて、いろいろと聞いてみた。 Robin Hartmann氏(ロビン・ハートマン): devcom Developer Conference Press- & Community RelationsRobin Hartmann “コミュニティを見つけ、思い出を作り、ビジネスをする”をテーマに、世界中のクリエイターのためのカンファレンスを ――今年のdevcom Developer Conferenceの注力ポイントを教えてください。: ロビン: 今年は、新しい会場でイベントを開催しています。昨年までは別の会場でしたが、今年はヨーロッパでも最大規模の新しいカンファレンスセンターで実施しています。この会場はgamescomエリア内にあり、広大な展示ホールを備えています。devcom Developer Conferenceは、この新しいカンファレンスエリアで開催する初めてのイベントとなりました! 会場となったのは、ケルンメッセ内に新しくできた、Confex conference center。とても勇壮な雰囲気。 ――新しい会場がもたらした変化は何ですか?: ロビン: 新しい会場に移ったことで、すべてのエリアにおいて参加者数は大幅に増加し、記録的な数になりました。昨年(2023年)は参加者数がキャパシティのリミットに達したので新しい会場に移る必要がありました。講演者数も昨年の250人から350人に増え、17のステージで合計210セッションが行われました。現時点で参加者数は45%増が見込まれています。 以前の会場では、展示エリアが限られていました。しかし、新しいカンファレンスセンターでは広大なホールがあり、入るとすぐにその広さを実感できます。これは、一般の方でも業界関係者でも、devcomやgamescomのためにケルンを訪れる人たちが期待する“gamescomの雰囲気”をそのまま提供するものです。現在では、私たちのイベントに参加するだけで、このgamescomらしい大規模な体験が味わえるようになっています。新しい会場のおかげで、大きな飛躍の年となりました。昨年は約3400人の参加者がいましたが、今年の登録者数は5000人に上りました。 ――参加者はおもにドイツの方なのですか? ロビン: 現時点では、参加者の50%以上が国際的な参加者で、約35~40%がドイツや周辺国からの参加者です。今年は68ヵ国から参加者が集まりました。日本からの参加者もありましたね。 ――今回のdevcom Developer Conferenceでとくに注目を集めたセッションはありましたか? ロビン: 初日の月曜日の基調講演をKelsey Beachum(『Outer Wilds』のゲームライター兼ナラティブデザイナー)が担当し、2日目の基調講演はJason Latino(Larian Studiosのシネマティックディレクター)が行いました。もっともお気に入り登録されたセッションのひとつは、ユービーアイソフトのFazi Mesmerによる“Demystifying Creativity(創造性を紐解く)”でした。また、Insomniac GamesのTerence Cohenによる技術トーク“Code of Power Ups”も人気がありました。さらに、Jason della Roccaによる”You must Self-Publish: The Future of Indie Funding(インディーゲームの資金調達における自費出版の重要性)”も注目されました。 devcomは今年で7年目を迎え、GDCにつぐ世界第2位、そしてヨーロッパ最大規模の開発者会議です。今年は18のトピックがあり、ゲームデザインやサウンド、アートやコーディングだけでなく、メンタルヘルスやプロダクション管理、チーム開発、そして人材管理に特化したセッションなど、ゲーム業界で持続可能に活動するための広範なテーマがカバーされています。最近の業界のきびしい状況を反映し、持続可能なゲーム開発やマーケティングに関するセッションがとくに関心を集めています。 『Outer Wilds』のゲームライター兼ナラティブデザイナーであるKelsey Beachum氏による基調講演。 ――参加者のフィードバックによると、devcomに参加する最大の理由はネットワーキングだとありましたが、ネットワーキングの需要は大きいのでしょうか?: ロビン: イベント前に参加者に参加の動機を聞くと、多くは「素晴らしいトークセッションを聞きたい」や「ビジネスをしたい」と答えますが、イベント後に聞くと「ネットワーキングがもっとも重要だった」という声が増えます。セッションやビジネスももちろん大事ですが、会場では参加者が楽しい時間を過ごし、思い出を作りながらネットワークを広げるための機会をたくさん用意しています。2年前にチームで考えたスローガン“コミュニティを見つけ、思い出を作り、ビジネスをする”が、私たちの核となるコンセプトです。 これらの3つは、トークセッションを聞くこととは直接関係ありません。なぜなら、devcomに参加する人々にとって、すぐれたカンファレンスであることは前提だからです。それに加えて彼らは、仲間を見つけて、アイディアを交換し、友人や新しいパートナーを見つけるために参加します。毎年、参加者が「去年こんなことがあったね」とか、「2年前にあのパーティーで会ったデベロッパーを覚えている?」と言って思い出を共有しています。成功するカンファレンスには、よいセッションだけでなく、参加者に素晴らしい体験を提供することが必要です。 そしてビジネスの機会も重要な要素です。多くのプロフェッショナルが、パブリッシャーやデベロッパー、ビジネスパートナーを見つけるために来ています。私たちは、よいカンファレンスであることは当然だと考え、参加者が何を期待できるのかを伝えることに力を入れています。これが、毎年楽しく満足のいく体験を提供するための大切な取り組みです。知識だけを得るなら、GoogleやYouTubeでも手に入るからです。 17のルームで210のセッショが行われた。 ――よいネットワーキングの機会を提供するために、何か特別な取り組みや機会を設けていますか?: ロビン: はい。さまざまな取り組みをしています。参加者向けに複数の種類のパスを用意しており、ほとんどの参加者はセッション中心の“コンテンツパス”を選びます。セッションとネットワーキングの機会を提供する“ビジネスパス”、さらに特別な体験が含まれる“VIPパス”や“スピーカーパス”もあります。 コンテンツパス向けにも、フードエリアや十分な座席スペースを確保し、夜には無料の集まりを提供しています。たとえば、月曜日の夜にはカンファレンス会場で全員向けに大規模なパーティーを開催し、ほかの場所に行かなくても交流できるようにしています。また、火曜日にはさらにパーティーらしい雰囲気で、インディーゲームの展示も行います。 そのため、もっとも安いパスでも、夜のプログラムやパーティーが自動的に含まれています。ビジネス参加者向けには、VIPや投資家、パブリッシャーと交流できる“ビジネスミキサー”を追加で提供し、さらなるビジネスの機会を設けています。 会場では交流するスペースがふんだんに設けられている。 往年のゲーム機が遊べるスペースも。 ビジネス参加者向けには、VIPや投資家、パブリッシャーと交流できる“ビジネスミキサー”や専用ラウンジもあり、軽食や会議スペースを提供します。VIP向けには、日曜日から始まる特別なプログラムもあり、市内観光やボートツアー、ディナーなど、個人的なつながりを深めるための多彩な体験が用意されています。 VIPプログラムでは、通常の参加者には提供されない特別な体験が用意されています。まず、VIPプログラムは日曜日から始まり、さまざまなアクティビティが計画されています。これには、ケルン市内を巡るバスツアーやボートツアーが含まれ、都市の観光を楽しむことができます。さらに、絵画セミナーやランチディナーのイベント、さらにはグラップリングやスパーリングなど、アクティブな体験もあります。これらのアクティビティを通じて、スピーカーやほかのVIP参加者どうしが個人的なつながりを深め、長期的な関係を築くことが目的です。 また、日曜日の夜には、ケルン市内の歴史的なヴォルケンブルクで、VIPやスピーカー、パートナーを招いた特別なディナーが開催されます。ここでは、インディーゲームアワードの授賞式も行われ、VIP参加者がインディー開発者と直接交流できる貴重な機会となっています。VIP参加者には、業界の重要人物とのネットワーキングや、より深いレベルでのつながりを築くための特別な場が数多く提供されており、これがdevcomのVIPプログラムの大きな魅力です。 加えて、会場内にはVIP専用のラウンジが用意されており、ここでビジネスミーティングを行ったり、軽食を楽しみながらリラックスした時間を過ごすことができます。VIP参加者は、これらの特別なプログラムを通じて、ビジネスチャンスを広げつつ、記憶に残る体験を共有することができるのです。 devcom Developer Conferenceの前夜に行われたパーティーの模様。和気あいあいとした雰囲気の中で、交流が図られていた。 ――今後の展望や、つぎに考えているステップを教えてください。: ロビン: 今後は、さらに大規模なイベントに成長させていく予定です。向こう4~5年は現在の新しい会場を活用していく計画です。業界のニーズやトレンドに応じてコンセプトを毎年見直し、新しい活動の拡充も検討しています。特定のトピックに焦点を当てたプログラムの延長も視野に入れています。また、200以上のセッションがすでに行われているため、今後はコンテンツの質のさらなる向上に注力し、業界のもっとも関心の高いトピックを取り上げていきます。 これについてはまだ具体的な計画はありませんが、さらに多くのコンテンツを提供する方法を検討しています。現時点で200以上のセッションがあり、数としては限界が近いかもしれません。会場内ですべてのセッションを見ることは不可能であり、すべてアーカイブで後で視聴できるようになっています。今後は、来場者向けのコンテンツの質をさらに向上させ、業界で注目されているトピックに焦点を当てることに注力します。 また、展示会場のコンセプトや、ビジネス投資家やVIP参加者向けの提供内容も見直し、彼らをさらにサポートできる方法を模索します。gamescomでは、トレードビジターの関心が高まり、devcomにも参加する傾向が見られています。これにより、1回の出張で1週間のビジネスチャンスを最大化できるようにするため、ほとんどの参加者はひとつのイベントだけでなく、両方のイベントに参加することが増えています。 率直に言って、devcomとgamescomの組み合わせに匹敵するものはありません。gamescomは世界最大のビデオゲームの見本市であり、一般参加者や業界関係者の数を考えると、その規模はほかに類を見ません。カンファレンスとしてはGDCのほうが大きいかもしれませんが、GDCにはトレードショウがないため、gamescomのような要素はありません。 地元のプロのゲーム開発者の皆さんにぜひdevcomに参加していただきたいと思います。多くの参加者が初めてdevcomに参加しています。gamescomは規模が大きいので少し不安になることもあるかもしれまんが、初参加者には特別なサポートを提供しています。旅行のアドバイスやおすすめのセッション、ケルンでの観光案内、ビザ申請のサポートなどを行い、どんな質問にも答えます。たとえ小さなチームや個人での参加でも、私たちがしっかりサポートしますのでご安心ください。 devcomは世界で2番目に大きなカンファレンスですが、私たちのチームはとても親しみやすく、参加者はいつでも私やCEOのステファンに直接質問することができます。参加者の体験が最も大切で、彼らが楽しい時間を過ごせるように全力でサポートしています。