SNSでディスり合うギャラガー兄弟が再結成「オアシス」ツアーの行方は
辛酸なめ子のじわじわ時事ワード【オアシス再結成】
いつのころからか耳にするようになった「気になる言葉」を、漫画家でコラムニストの辛酸なめ子さんが独特の切り口で読み解く夕刊「popstyle」の人気連載「辛酸なめ子のじわじわ時事ワード」。今回は【オアシス再結成】(おあしす・さいけっせい)です。 【イラスト】大谷翔平選手の妻・真美子さんが持つバッグの抜群の宣伝効果はエルメス「バーキン」並み? イギリスの世界的ロックバンド、オアシスの再結成が話題になっています。1994年にデビュー、2009年に解散したオアシスは、曲調は速すぎず遅すぎずミディアムで、心に残るサビと、やんちゃ感が漂いながらもアンニュイなボーカルが特徴。そして常に話題になるのが、メンバーのノエル・ギャラガー(兄)とリアム・ギャラガー(弟)の仲の悪さです。 もともと少年時代に地元で有名なワルだった兄弟。ノエルが最初に音楽にハマり、リアムは当初音楽に興味がなかったのですが、ある時不良に木槌で頭を殴られて急に音楽に目覚めた、という不思議なエピソードが。音を感じる脳の部位が刺激されたのでしょうか。 オアシスは1991年結成、アルバムが発売されると、ノエルの作曲の才能とリアムのボーカルの魅力もあって、大ブレイクしました。いつも不機嫌な仏頂面というイメージの2人ですが、物憂げなイケメンは絵になります。 でも、バンドの歴史は兄弟喧嘩の歴史に……。ライブ中、ドラッグで酩酊したリアムにブチ切れたノエルを逆にタンバリンで殴打したり、レコーディング中に酔っぱらったリアムにノエルがキレたり。ライブ開演前やツアー中に激しい兄弟喧嘩が勃発し、ライブが突然キャンセルになることも。リアムがノエルの妻が浮気した疑惑を言い出して、ノエルが激怒したハプニングもありました。解散の引き金になった喧嘩は、リアムがノエルのギターを振り回して破壊したという事件。リアムが何かやらかしてノエルがキレる、というパターンが多いようです。 2019年のドキュメンタリー「リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ」では複雑な兄弟関係が明らかに。オアシス解散後、落ち込んでいたリアム。「リアムはステージに立つ時、ノエルただ一人を意識している」という関係者のコメントもありました。つい兄に絡みたくなってしまうのは愛情表現なのでしょうか。 解散してからはお互いのSNSでディスり合っていた2人。バンドが解散して実生活では距離ができても、ネットでやり合うのがコミュニケーションの一つだったのでしょう。喧嘩ネタは常に世間の注目を集めていました。再結成後のライブではファンが合唱したり、一体感で平和の空気を出したりすることで、喧嘩の衝動を抑えられるかもしれません。ツアーが無事に続くかどうかはファンのリアクションにかかっています。
ジャケ写の駅舎
オアシスのCD「サム・マイト・セイ」のジャケット写真のクラシカルな駅舎。2007年にこの建物を39万ポンドで購入したコリス氏とフェルプス氏は、ここが「聖地」だと後で知ったとか。 駅舎にはジャケットのように、橋から手を振る人や手押し車を押したがる人が後を絶たず、再結成発表後、一層盛り上がっているそうです。両氏はオアシスにまた来てほしいと熱望しているとか。ジャケ写ではリアムがじょうろで水を撒いていて、日本の慣用句ですが「過ぎたことは水に流そう」というポジティブなメッセージも感じさせます。(漫画家・コラムニスト、エッセイスト)