めでたいはずの「出産」。誰かの幸せの裏には、誰からの不幸が。いくら偉くても、我が子には生後1カ月まで会えなかった⁉【NHK大河『光る君へ』#36】
本作に色濃く描かれている…誰かの幸せは誰かの不幸
本放送では、道長ファミリーが将来に胸をふくらませ、まひろが女房として充実感を抱きながら働く姿が描かれていました。しかし、誰かが幸せを感じているとき、その裏では不幸の只中にある者が存在するのが世の常といえるのかもしれません。 伊周(三浦翔平)は道長派が彰子の出産を祈る中で、彰子の出産を阻むためにひとり呪詛を行っていました。彰子が皇子を生むと、伊周は権力の座からますます遠ざかるためです。 また、ききょう(ファーストサマーウイカ)は伊周から一条天皇の心をまひろが書いた物語がとらえ、このことが彰子の出産につながったと聞かされると、心をかき乱され、けわしい顔つきに。 帝は自分が書いた草子を破れるほど読んでいたのに、今はまひろの物語ばかり読んでいると聞かされれば、よい気がしないのは当然でしょう。さらに、定子一筋であった帝の心に変化が起きたと知れば、定子の心中を思い怒りや悲しみといった感情が生じるものです。 まひろの充実した宮仕えを快く思っていない女房も...。左衛門の内侍(菅野莉央)は赤染衛門(凰稀かなめ)にまひろに指南役を奪われたことが悔しくないのか問います。彼女自身については中宮様のおそばに仕える役目を奪われたと主張していました。 赤染衛門はまひろに不満を抱く彼女に「中宮様が 藤式部をお求めになれば致し方ないことです」と一言残し、立ち去るという大人の対応を。 しかし、左衛門の内侍から「左大臣様と藤式部はどういう間柄なんでございましょう?」「ただの主従ではありませんわよね」と言われると、彼女の前では平然を装いますが、何かがひっかかったような表情を見せます。 本放送の最後では、赤染衛門がまひろを意味ありげに呼びとめましたが、このときの赤染衛門の表情は険しく、まひろを疑っているようでした。 まひろと道長との関係は周囲に知れ渡ってしまうのだろうか。 ▶つづきの【後編】では、平安時代の宮中ではシングルマザーやバツイチの女性が働いていた!?…についてお届します。
アメリカ文学研究/ライター 西田梨紗