ノーベル賞授賞式を前に、平和と希望の音色奏でる「被爆ピアノ」 国内外1500カ所以上で演奏
メ~テレ(名古屋テレビ)
今年のノーベル平和賞を受賞した「日本被団協」。授賞式を来週に控える中、三重県津市では広島で被爆したピアノのコンサートが開かれました。 10月、広島・長崎の被爆者でつくる全国組織「日本被団協」がノーベル平和賞を受賞。 来週開かれるノーベル賞授賞式に先立ち、三重県には被爆の傷跡を残す「あるもの」が到着しました。 広島から届いたのは、1台の「ピアノ」です。 これはただのピアノではなく「被爆ピアノ」と呼ばれるもの。 1945年、広島市の爆心地から約3kmの住宅で爆風・熱線・放射線などの被害を受けました。 この被爆ピアノの演奏会が12月6日、三重県津市で開かれました。
被爆ピアノを管理する被爆2世の調律師
「被爆ピアノ」を管理しているのは、広島県の調律師・矢川光則さん。 矢川さんは祖父母と両親が被爆を経験した「被爆2世」です。 26年前、ピアノの修理活動をしているなかで「被爆ピアノ」に出会い、現在7台の「被爆ピアノ」を管理しています。 「ピアノの被爆状況もしっかり聞かなければと思い、何度も元の持ち主のところに行き、当時の状況を聞く中で、だんだんと平和意識に目覚めていった」(矢川ピアノ工房 取締役 矢川光則さん) 「被爆ピアノ」は2005年から国内外の各地1500カ所以上で演奏され、2017年には、ノルウェーのオスロで開かれたノーベル平和賞を記念したコンサートでも披露されました。 「私は被爆ピアノとの出会いで、戦争のことや核兵器の恐ろしさなどを学んだ。今の特に若い人たち、子どもたちにそういうことを広めていかなければ。私にこういうピアノを託されたことは1つの使命があるのではないかと思い、今こうやって被爆ピアノで全国へ向けて平和の種まきをしている」(矢川さん)
被爆当時のままのピアノ線
そして「被爆ピアノ」のコンサートが開演。 「このピアノ、217本 弦がはってあるんですけど、私に託されたときに2本弦が切れていました。あとは被爆当時のままのピアノ線。これは被爆ピアノなので、そのままの方がいいのではないかと。どのような音が出るか楽しみにしていただいたら」(矢川さん) 演奏するのは、三重県鈴鹿市出身の「ピアニストK」さんです。 「戦争っていうのは、この世の最大の暴力だと思うんですよね。ましてや核兵器なんかは、この世の絶対悪であって、いま核兵器を使うとどういうことになるのかということも、きょうのコンサートを通して、みなさんがまず1歩考えてもらえるきっかけ作りになっていけば」(矢川さん)
世界中に平和への願いを伝え続ける
「被爆ピアノ」が奏でた、平和と希望の音色。観客の心に届けたものは――。 「すごく力強くて、愛をもらったという感じがして、力づけられました」(観客) 「とにかく涙が出てくる。(被爆ピアノが)がんばっているというか、自分も負けちゃいけない、がんばらなきゃな…」(観客) 12月10日のノーベル賞授賞式の翌日は、大阪音楽大学で被爆ピアノのコンサートが予定されています。 これからも被爆ピアノは、世界中に平和への願いを伝え続けます。