2023年の締め括りと2024年の始まりを彩る5曲
遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。本年もOKMusicをよろしくお願い申し上げます。ついでに私のこともよろしくお願いいたします。毎年1月の更新日はこの挨拶で幕開けすることに決めていますが、今年は自然の脅威に改めて恐れを抱きながら年明けを迎えることになりました。何年もこのコラムを執筆させてもらえることに感謝しながら、この幸せがいつまでも続くとは限らないという思いも噛み締めています。複雑な感情に胸をかき乱されながら、今回はどんな楽曲を紹介するのか迷ったのですが、素直に2023年の総決算として、そして2024年のスタートを飾るのにふさわしい5曲をピックアップしていきます。
「Noize」('24)/小沢健二
小沢健二の新作EP『東大900番講堂講義 ep』に収録された「Noize」は、メインヴォーカルを務めるマヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)と、マヒトの声にコーラス、ギター、ホイッスルで呼応する小沢の出会いを祝福するかのような多幸感に満ち、肌を切る冬の風とバチバチ喧嘩し合って体を温める。子供のような無垢さを持ち、皺の数だけ身が軽くなる老人にも似た“枯れ”が共鳴するヴォーカリゼーションが、新たな恋に弾む胸を表現した歌詞の速度を上げ、華やかな管楽器の演奏がまだ見ぬ春に募る思いを描く爽快感が堪らない。頭の中と心の内を去来し、自分を取り囲む世界の静けさの分だけ膨らみ、ゴチャゴチャと混沌の色を増していく“ノイズ”を掬い出して磨き上げたられた一曲だ。
「16:28」(’23)/君島大空
君島大空の「16:28」は昨年発表されたアルバム『no public sounds』に収録されている、壮大でサイケデリックなナンバー。一音一音の重たさを丹念に味わうスローテンポの静謐なイントロから始まり、燃え盛る炎のように激しいギターがこの曲と“聴いている自分”の挟間を縁取り、ドリーミーでノスタルジックな歌詞を焦がしていく。これだけのドラマチックな展開の中にあって、性別や年齢といった隔たりを優雅に飛び越える繊細なヴォーカルは少しもへし折れることがなく、曲が進むごとに強度を増して、凛と立っている。さまざまな憂鬱を抱えた朝にも、うたた寝にぴったりな休日の午後にも、いくら瞼を閉じても眠れない夜にも聴きたくなる、タフネスとパワフルさが脈打つ。