新車はSUVラッシュ! ならば実際はどんなクルマが売れている?
SUVは存在として印象的
ならばなぜ、多くの人は「最近は“なんとかクロス”みたいなクルマばかりが売れてるなぁ」という印象を抱いてしまうのか? 結局のところその理由は、まず「いまコンパクトカーやミニバンに次いで売れているカテゴリーが、それらSUV系である」ということ。そして、それに加えていわゆる「非注意性盲目」との“合わせ技一本”が華麗に決まっているから――ということになる。 前述したとおり、今も昔も“一番売れるクルマ”とは「役に立つクルマ(役に立たせるためのクルマ)」である。だが人間というのはパンのみにて生きるものでもないため、今も昔も「あまり役に立たないかもしれないが、何らかのすてきな情動を感じさせてくれるクルマ」が、売れてるカテゴリーの2番手グループを形成する。 かつてはそれがスポーティーなクーペだったわけだが、昨今はその位置を「SUVまたは“なんとかクロス”」が担っている。その証拠に(?)販売台数トップ10のなかにはヤリス クロスしか入っていないが、11~20位においては10車中3車がSUVであり、21~30位では10車中9車(!)をSUVが占めている。まずは生存本能みたいな部分を満たすために実用的なクルマが確実に売れるわけだが、「その次の欲求段階」を満たすクルマとしては今、圧倒的にSUVが選ばれている。だからこそ総体としてのSUVの保有台数は増加し、その結果として「やたら目につく」ということになるのだ。 そして同時に、人はしばしば非注意性盲目――視野には入っているのに、注意が向けられていないために見落としてしまう現象――や、それに似た現象を引き起こす。 そのため、大量に売れているフツーのコンパクトカーやミニバンなどは「風景の一部」となってしまい記憶に残らず、自動車好きにとっては比較的興味を引く存在であるSUVや“なんとかクロス”が、良くも悪くも記憶に残り「最近は“なんとかクロス”みたいなクルマばかりが売れてるなぁ」という印象が形成されるに至るのだ。たぶん。 (文=玉川ニコ/写真=トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、スバル/編集=関 顕也)
webCG