実は野菜の一大生産地! 熊本の野菜の魅力を世界や次世代へ伝えたい 「乾燥野菜」に新たな価値を見いだした起業家、その先の夢
乾燥野菜の安定供給に向けた挑戦
――事業をおこなう上での課題はなんでしょうか。 最大の課題は原料の安定調達です。気候変動の影響で野菜の生育が不安定になっており、価格も上昇しています。自然との闘いの中で、安定してお客様に供給し続けることが難しくなっています。 例えば、最近の猛暑でコマツナが育たないといったことが起きています。以前は野菜が余っていた時期もありましたが、今は状況が変わってきています。製造計画の見直しをおこないつつ、熊本大同青果の自社農場での新たな作付けや産地開拓に取り組んでいます。 また、大手企業からの委託生産が増えてきたことで、これまで以上に厳しい品質管理を求められています。 例えば、大手小売業のプライベートブランド商品の製造を受託することになり、初めて工場を2交代勤務の態勢で動かしました。受注数は数十万パック、全15アイテムの乾燥野菜をすべて供給しています。うれしい半面、品質管理の責任の重大さを感じます。 一昨年には、食品製造の安全に関する国際認証「FSSC22000」を取得しました。製造工程の改良・改善や従業員の教育などにも力を入れ、不良品を出さないよう徹底した品質管理態勢づくりに努めています。お客様の期待を裏切らないよう気を引き締めて日々取り組んでいます。
熊本の野菜の魅力を世界や次世代に
――今後目指すことや目標を教えてください。 私たちの企業理念は、地元熊本の農業を支援しながら、食品ロスを削減し、健康的な食品を提供することです。生産者の思いや努力をお客様に伝え、つなげていくことが重要な役割だと考えています。 この理念に基づき、今後はさまざまな展開を考えています。まず、キッチンカー「ポポット」の事業を拡大し、首都圏でのお弁当販売や宅配、ケータリングなどもおこなっていきたいと考えています。より多くのお客様に、直接、熊本の野菜の魅力を伝える機会を増やしたいです。 また、最近、世界的に有名なレストラン「NOMA」のシェフが工場を訪れ、京都のポップアップレストランで私たちの乾燥野菜を使ってくださいました。その後も継続して発注をいただいています。このような評価を励みに、熊本の野菜の魅力を世界に発信していきたいと考えています。 さらに、農業との連携も強化していく予定です。現在、グループ全体で100haほどの農地を持っており、そこで作った農産物を使った新しい商品の開発も検討しています。同時に、地元の生産者との協力関係も深めていきたいと考えています。 食品ロス削減の取り組みとしては、トマト以外の規格外農産物の有効活用にも力を入れていきます。これは環境への配慮だけでなく、生産者の方々の努力を無駄にしないという思いもあります。 地域貢献の観点からは、将来的に子供たちが地元で育った野菜を食べて育っていける環境を作ることを目指しています。地域の食文化を守り、次世代に伝えていくという意味でも重要だと考えています。 最終的には、私たちの活動を通じて熊本の農業が活性化し、より多くの人が農業に興味を持ち、後継者が増えていくことを願っています。熊本の野菜が日本中、さらには世界中で愛されるようになることが私たちの大きな目標です。 ――最後に、個人的な夢や今後のビジョンについて教えてください。 私個人としては、いつかは小料理屋を開きたいという夢があります。実は会社を始める前は店を開こうと思っていたんですよ。今でもその夢は捨てていません。会社の経営をしっかり軌道に乗せたら、小料理屋で料理を作りたいと思っています。 乾燥野菜や野菜の加工品のおいしさを直接お客様に伝える場所を持ちたいんです。熊本の野菜の魅力を通じて、多くの人に笑顔になってもらえるよう、会社としても個人としてもこれからも頑張っていきたいと思います。
朝日新聞社