選挙予測報道の意義を考える 株式会社デザインルール代表・佐藤哲也
報道機関にとって選挙は最も重視されるテーマですが、中でも議席予測や情勢調査の報道はその花型でしょう。各報道機関は取材結果を踏まえつつ、莫大な費用と威信をかけて予測結果を出します。また、ネット選挙解禁で、ネットと政治の関係に関心を持たれていることもあり、ネット事業者による予測にも注目が集まっています。大手ポータルサイト事業者などの保有するユーザアカウント数は、世論調査を行うには十分な量があることや、検索結果などのデータを利用した新しい予測ができることも注目すべき点でしょう。
選挙予測には「事前の予測」と「選挙当日の予測」がある
ところで、日本の選挙の予測には大きく分けて2つの予測があります。それは、「事前の予測」と「選挙当日の予測」です。中でもユニークなのは「選挙当日の予測」です。この「予測」は厳密に言えば「予測」ではありません。参考データとして投票所で投票を済ませた人に「どこに投票しましたか?」を尋ねる調査、いわゆる出口調査を行っているからです。その結果を20時に行われる選挙特番で発表するために、急いで集計・予測するのです。その予測の結果は、選管の開票が進むにつれて意味のなくなる「予測」であり、その寿命は大変短いものです。ですが、選挙特番での「当選確実」報道にこだわっているテレビ局は莫大な経費をかけてこの調査を行っています。 そのような議席予測報道ですが、一部では懸念する声もあります。主な批判としては、「事前の予測」の報道結果が選挙結果に影響をあたえることはあってはならないというものです。公職選挙法には「人気投票の公表の禁止」という項目があり、選挙結果に不公正な影響を与えることがないように配慮すべきであるとされています。このような考え方にたてば、報道の結果が事前にわかることは望ましくないという考え方にも一定の理解が出来ます。もっとも、別の記事で小林哲郎氏がまとめているように、選挙結果に対する影響は強く懸念されるほどではないという結論が得られています。