【朝日杯FS】アルテヴェローチェ大物感!残り1F一気加速、須貝師「文句なし」
既に王者の風格が漂っている。「第76回朝日杯FS」の追い切りが11日、東西トレセンで行われた。新馬戦、サウジアラビアRCを連勝中の無敗馬アルテヴェローチェ(牡=須貝)は朝イチの栗東坂路で併せ馬。活気あふれる動きでグイグイ駆け上がった。新馬戦以来のタッグを組むレジェンド武豊(55)がほれ込む逸材。21年ドウデュース、22年ドルチェモア、昨年ジャンタルマンタルに続く無敗の2歳マイル王を目指す。 武豊とのタッグで注目を集めるアルテヴェローチェは開門直後の坂路に姿を見せた。ブエナオンダ(3歳2勝クラス)と併せ馬。折り合い重視の入りで奇麗な加速ラップを刻む。残り1F(200メートル)から鞍上の重心移動でグイッと加速すると、4F(800メートル)52秒3~1F12秒1を馬なりで計時し、1馬身先着した。スタンドで見届けた須貝師は「無理せずに調整程度で、あの時計だから文句なし。何も不満はないし、予定通り調整できた」と胸を張る。 1週前追いは武豊騎乗でCWコース6F(1200メートル)80秒1~1F11秒1。抜群の切れ味を見せた。大きく追走した分、常に攻め駆けする僚馬ユティタム(4歳オープン)に首差遅れたが適度な気合乗りで集中して走れていた。須貝師は「以前より乗りやすくなった、と豊ちゃん(武豊)も褒めてくれた」と納得の笑み。デビュー当初は子供っぽさもあったが精神面は着実に成長している。 札幌新馬戦(芝1500メートル)は道中4番手から早め先頭で押し切った。レース後、武豊に「大物感がある」と言わしめた逸材。やや重の前走サウジアラビアRCは武豊が凱旋門賞遠征のため、佐々木が騎乗した。好スタートを切ったが先々を考え、控える競馬。直線に入った時点では後方2番手だったが馬群の外から力強くひと伸び。内で粘るライバルをまとめて差し切り、重賞制覇を飾った。指揮官は「鞍上が道中よく辛抱してくれて、絶妙なポジション取り。競馬を教えてくれた。あのパフォーマンスは能力がないとできない」と絶賛する。 札幌、東京と全く違う適性が求められる競馬場で連勝。2戦とも着差以上の内容だから将来が末恐ろしい。「センスが良く、いい根性を持っている」と評価した上で、「広い競馬場でこそ良さが生きる。京都外回りは合うと思うよ」と初舞台を歓迎した。 先週の阪神JFは上村厩舎のアルマヴェローチェが勝ち、所有する大野照旺氏はJRA・G1初制覇。“ヴェローチェ軍団”が最高の形でバトンをつないだ。流れに乗って、堂々とG1舞台に向かう。 《志半ばでターフを去った伯母の分も…》須貝師にとって、管理するアルテヴェローチェは特別な思いがある。伯母クルミナルは15年に須貝厩舎からデビュー。新馬戦、エルフィンSと連勝を飾った。続くチューリップ賞は1番人気11着と大敗を喫したが、牝馬3冠の桜花賞2着、オークス3着と好走。指揮官は「素晴らしい馬だった」と振り返る。 秋の活躍が期待されていたが夏に右前脚の屈腱炎を発症した。復帰はかなわず、わずかキャリア5戦で引退、繁殖入り。「あの子に関しては、本当に消化不良でした。あのまま無事にいっていたら…と思う。思い入れがある血統で、ずっと追いかけていた」と明かした。そして22年セレクトセール。その血を受け継ぐ当歳馬が上場され、それがアルテヴェローチェ(9900万円=税込み)だった。「血統背景、体つきを含め、この馬しかいないと思った」。期待通りの走りでデビュー2連勝。志半ばでターフを去った伯母の分も…。その思いをG1舞台にぶつける。 《今年2歳戦勝率トップ》須貝師は今年JRA52勝を挙げ、杉山晴師と1勝差で現在リーディング首位。2歳戦に限定すると調教師別最多タイの12勝をマークし、勝率37.5%はトップの数字だ。勝利数だけでなくマジックサンズで札幌2歳S、アルテヴェローチェでサウジアラビアRCと2歳重賞を2勝するなど濃い内容の競馬を続けている。朝日杯FSは7頭目の起用。22年ドルチェモア以来、2年ぶりVを目指す。