テスラを追い詰めるBYD! 名実ともに「世界一」となれるのか? 垂直統合で世界EV市場に挑戦、「ありかも」CMは今後「超あり」or「なし」どちらか
米国市場への挑戦
今やテスラはBYDの世界進出における最大のライバルだ。BYDは世界市場でテスラに真っ向勝負を挑んでいる。2022年、BYDの純利益はテスラを上回り、販売台数でもテスラに迫った。 ブランド力ではテスラに分があるが、BYDはコスト競争力と幅広い製品ラインアップで対抗している。BYDはAtto 3のような戦略的なエントリーモデルで、テスラがカバーしていない層の需要獲得を狙う。 また、高い環境性能をアピールすることで、持続可能なブランドイメージの構築にも取り組んでいる。BYDがテスラを追い続ける一方で、中国の新興メーカーであるニオ、シャオペン、リ・オートも成長を続けており、EVをめぐる世界的な競争は激化の一途をたどっている。 米国の関税障壁に直面しても、BYDの海外攻勢は揺るがない。2010年には米国市場への参入計画を発表したが、現時点では商用車への展開にとどまっている。 障壁の高い米国市場への参入が困難ななか、より有望な市場を求めて世界各国に販路を拡大したのは当然のことだ。今後、強力な研究開発力、優れた製品品質、堅実な市場戦略を武器に、BYDはさらに幅広いブランド影響力と市場シェアを獲得することが期待される。
中国勢との競争激化
BYDの国際的な拡大戦略の中心は、独自の垂直統合型に基づく競争優位性である。BYDは電池メーカーとして、長年培ってきた技術をEVの開発に応用してきた。しかし、後発というハンディキャップを克服するためには、社内の学習と人材育成に一層注力する必要があろう。 特に、グローバル市場で通用する人材の獲得・育成は喫緊の課題である。また、垂直統合型の弊害を回避するためには、外部パートナーとの連携を柔軟に取り入れることが不可欠である。グローバル化のさらなる深化とブランド力の向上が、BYDが世界一のEVメーカーを目指す試金石となる。 テスラなど欧米勢やニオなど中国勢との競争が避けられないなか、垂直統合型で成長してきたBYDはどう対応するのか。同社の将来は、EV市場の覇権を狙う中国の将来とも絡んでくる。 「ありかも、BYD!」は今後どうなるのか。「超ありかも」か、それとも「なしかも」か。これからも同社の動きから目が離せない。
川名美知太郎(EVライター)