札幌「千歳鶴」初の女性杜氏 市澤智子さん(下) 造り手の気持ち伝えたい
日本酒は造り手が気持ちを込めてみんなで造り上げるもの
今の日本清酒が課題としているのは、どうやって“札幌の地酒”感を出していくかです。そのためには、日本酒同様「熟成期間」が必要だと市澤さんは話します。 「日本酒というのは、杜氏と蔵人(くらびと)の気持ちが同じ方向を向いて、その気持ちを込めてみんなで造り上げるものです。これは日数をかけて地道にやっていく作業なのですが、ブランド作りもじっくり時間をかけて浸透させていくべきだと考えています。」(市澤さん) この作業を進めるにあたり、市澤さんは「何を残し、何を変えるのかの見極めが大切」だと感じています。 「144年の歴史を持つ酒蔵ですから、『千歳鶴』の良さを残しつつ変化させていかなければなりません。『何が一番大事なのか』という本筋にたどり着くためには、何を残して何を変えるのかの見極めがとても大切なんです。もの凄く大変な作業なのでいっぱいいっぱいになってしまいますが、時間はあっという間に過ぎていきますね。」(市澤さん) 市澤さんが日本清酒入社前に故郷・釧路の酒蔵にいた時のことです。日本全国を渡り歩いている日本酒好きの方が、市澤さんの元に訪れてきたことがあるそうです。消費者が酒蔵にまで造り手に会いに来ること自体非常に嬉しく感じるそうですが、その時の言葉が今までの「最高の褒め言葉」となっています。 「その方は『このお酒は、造り手の気持ちが伝わるお酒だ』と言ってくださったんです。造り手にとって、本当に励みになる言葉でした。よく『理想の日本酒はどのようなものですか?』と質問を受けるのですが、理想の味というのは日々変化していくものだと思います。しかし、『造り手の気持ちが伝わる日本酒』というのは普遍的ですよね。ここ日本清酒で『造り手の気持ちが伝わる日本酒』を造ること、それが今の私の目標です。」