国民にとって望ましいのは「実質賃金と生産性の好循環」 門間一夫
非常に難しいのは、冒頭に述べたとおり、今の円安が主として海外の金融政策に起因している点である。それでも、日銀の金融政策がより柔軟に利上げを模索できないのかどうかは、ひとつの論点である。日銀は制度的に「為替の安定」に責任を負っているわけではないが、金融政策が結果的に望ましくない為替変動をもたらす場合がある以上、そこへの一定の配慮は必要である。 その際に障害になるのは2%物価目標である。日銀は、「基調的な物価上昇率がまだ2%に達していない」として金融緩和を継続しているが、今の状況で「物価上昇率をもっと上げたい」という説明に納得できる国民は少ないのではないか。「円安を抑えて物価を安定させてほしい」と願う国民が大多数であるように思われる。 しかし、金利を上げたら上げたで、中小企業や住宅ローンの借り手などに影響が及ぶ。政府がなかなかデフレ脱却宣言を出さないことも、日銀の利上げを難しくしている面があるかもしれない。「円安だから日銀は利上げを」と単純にも言えず、政府・日銀が緊密に連携し、総合的に対応する必要がある。