老後は「貯金2000万円」があっても危険?「60歳で定年」すべきでない理由を、夫婦2人の平均支出をもとに解説
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)家計の概要 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の消費支出 同データは60代や70代の持ち家比率が90%を超えていることも明らかとなっており、仮に住居が賃貸だった場合は、平均消費支出に月数万円程度の住居費が上乗せされるでしょう。 これに税金や社会保険料といった非消費支出、さらには物価高騰といったリスク要素も加わるため、収入が年金のみだった場合の実際の収支は、机上の計算以上に厳しいと考えられます。
老後資金対策には多くの選択肢がある
60歳時点でリタイアして夫婦で暮らすには、2000万円程度の貯蓄だけでは不十分な上、平均的な年金額では65歳以降も生活費の赤字も続きます。しかし老後資金の対策は貯蓄や年金だけではありません。 例えば、NISAを活用した資産形成、iDeCoなど個人年金の活用で、老後生活の収支改善を図れます。いずれも長期間の運用で効果が大きくなるため、50代の人は「もう時間がない」と思うかもしれませんが、人生100年時代であることを考えれば10年単位の運用は不可能ではありません。 例えば、月3万円の積立であっても、5%の利回りがあれば、10年の積立期間で運用益106万円を含め466万円の資産形成が可能です。 他にも60歳以降短時間でも働くことを検討したり、年金の繰下げ受給や支出見直しを組み合わせたりするなど、老後資金の対策には意外に多くの選択肢があります。早めの取り組みが有効なのは言うまでもありませんが、ご自身にとってどのような対策が実施可能なのか考えるのが大切です。
まとめ
夫婦世帯で60歳以降に完全リタイアすると、貯蓄が2000万円程度あっても65歳時点で底をつき、年金受給開始後も平均的な受給額であれば、毎月の収支も赤字で家計にゆとりはありません。また、持ち家か賃貸かなど個人の資産状況次第で必要な老後資金はさらに増えるなど、心配な点は数多くあります。 しかし、貯蓄や年金以外にも、老後に向けた資産形成や働き方の見直しなどで、豊かな老後生活を実現するのも不可能ではありません。まずは、老後どのように生活したいのかを夫婦で考え、可能な老後資金対策を早めに実践してはいかがでしょうか。 出典 総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)家計の概要 厚生労働省年金局 令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況 執筆者:松尾知真 FP2級
ファイナンシャルフィールド編集部