「あと3回くらいほしかった」 文学大河に込めた思い 脚本の大石静が語る「光る君へ」
戦争のない大河といわれていたが、刀伊の入寇が描かれた第46回では、双寿丸ら武者たちが活躍し、歴史のうねりを感じさせた。
「武力を持たなければ国も守れないし、民も守れないっていう考え方が出てくる。刀伊の入寇のところで十分に表現しますので、時代が変わるということは、見てる方にも感じていただけると思います」。
紫式部は没年も諸説あり、その最期はわかっていない。「(物語が)流れていくと人物が自分で生きてくるから、最後が特に難しかったということはないです。終盤、武士の時代を感じさせようというのは、最初の方から決めていました。最終回はやりたいことがいっぱいあって、あと放送が3回くらい欲しかった」
■タイムトリップしたよう
平安時代は、これまで映像化があまりされてこなかっただけに、美術チームも考証や取材を重ね、渾身のセットを作り上げた。優美な清涼殿、女性たちがまとった色鮮やかな十二単-。平安時代に生きる人たちの営みが映像化されたインパクトは大きかった。
大石さんは、長い執筆の間に、たびたびセットの見学に訪れた。「美術チームの圧巻のセットが、みんなをひとつにつにしたところもある」と感じている。
「セットが立つと、『どういう風に動けるのかな』と他の現代劇でも見に行くんです。今回もそういう気持ちで行ったら、あんまりすごくて。これに負けない本を書かなきゃいけないって逆にプレッシャーでもありましたね」と語る。
特に印象に残っているのが、清涼殿のセットだ。「見えないところもしっかり作ってある。屏風の裏まで描いてあって、だからこそ、役者さんも本当にそこで生きている感じがすると思う」
1000年前の世界を演じるのにセットや衣装など美術が果たした役割は大きかった。
「衣装を着てセットに立つと、みんなタイムトリップしたみたいって言っていました。みんなここで、役で生きるんだみたいな感じを、役者にも私にも与えてくれたのは美術セットです」と絶賛する。