Mr.Childrenは、自分が潰されそうなぐらい大きな存在――30周年に桜井和寿が語る「これから」の20年
もう一曲の新曲である「永遠」には、50代を迎えた桜井が、これほどみずみずしいラブソングを書けることに驚かされる。Netflixの映画「桜のような僕の恋人」の主題歌であり、作品に大きな刺激を受けたという。 「みずみずしい恋愛というのは、僕の中ではもう相当遠いものなので、映画の物語に出てくる若い男女の気持ちを、これでもかってぐらい酌んで、今回は曲を作ってみたいと思いました」 SNSも見るが、それで精神的に左右されることはないという。その冷静さが、桜井を桜井たらしめている。 「自分のことだけではなく、いろんなことを見ますけど、ひとつの情報として見てるので、何かを見て、ぐあーっと心を動かされるっていうよりかは、雑誌を見て情報収集するような気持ちとほとんど変わらないです。いろんなことにアンテナを張り巡らせてるというよりも、いい音楽を作ることぐらいしか、あんまり興味がないんです」
大きな事件があれば、音楽の表現も言葉も変わっていく
Mr.Childrenは、2001年のアメリカ同時多発テロ事件の発生を受けて、「さよなら2001年」という楽曲を発表したことがある。 「毎月決まった日 振り込まれてくるサラリーのように 平和はもう僕等の前に 当たり前に存在はしてくれないけど」 この歌詞を書いた桜井和寿は、ロシアによるウクライナへの侵攻も、Mr.Childrenの作品に何らかの影響を及ぼすだろうと語る。 「世界的に大きいエピソードだけが作品に影響を及ぼすわけでもなくて、本当に小さい、誰かが言った一言が自分に引っ掛かってくることもあります。でも、今回のウクライナのことは、今、世界が変わってる大きな出来事なので、当然影響はあると思いますね。2001年もそうだったし。大きい事件では、世の中の感じ方や受け止め方、価値観も変わってくるから、当然音楽の表現も言葉も変わっていくと思うんですよね。響く言葉が変わってくるっていうか」
そして桜井は、30年を歩んできたMr.Childrenというバンドについて振り返り、「テクニカルなバンドじゃない」とも言い切る。驚くほどあっさりと言うので、真意を確認したほどだ。 「いや、僕らはテクニカルなバンドじゃないです。自分たちは底辺だっていうような意識はすごくあると思う。それがいい意味で謙虚さにもなってると思うし。でも、『音楽で人の心を動かすのにテクニックは一番大事な要素じゃないじゃん』っていうことを、直感的に気づいたのかもしれないし、だとしたら、それはそれですごい才能だとも思うし。そこに対して劣等感みたいなものもあまりないし、『それより大事なことを知ってるよ』っていう自信みたいなものは、メンバーみんなあると思います」 客観的に自分たちを見ながら、聴く者の心を動かすことを目指して、音楽を純化させてきたMr.Children。デビュー50周年の頃には、メンバーは70代だが、変化への覚悟はできているという。自然と出てきた「死」という単語が、桜井が本気であることを突きつける。 「60代までは想像できるんで、70代も想像できなくはないですね。どんどん変わっていくだろうし、それを受け入れてもいきたいし。老いていくこと、死んでいくことが見苦しいことだとも思いたくもないし。自分の中でできるだけ正当に受け入れて評価して、変わっていけたらなと思いますね。4人の健康に関しては心配ではありますけど、気を使うとまたそれがストレスで不健康になったりもしそうなんで、ほどほどにですね(笑)」