『室井慎次』日向杏はより凶悪、リクは完全洗脳だった…亀山Pが明かす初期設定&キャスティング秘話
ただ、すみれが今どこでどんな暮らしをしているのか、劇中では明確にされていない。「僕なりの設定というのはあるにはありますけど、それはあくまで僕の考えであって。たとえば、室井さんが石津夫妻の子供の話を聞いたあとにどこに電話をしたのかとか、最後の子供たちが乗ったダットラを運転しているのは誰かとか、そういうのも含めて、観た方がいろいろ考えてくださればいいと思います」と亀山プロデューサーはきっぱり。「最後の青島(俊作/織田裕二)くんのところもそうです。携帯は電波がないとタカが言っていたのに電話かかってきているし、彼が何で来たのかも明示してない。そのあたりは、全てご想像にお任せします」
「ただ、僕は子供たちを地域のコミュニティーで育てるという話にしたかった。だから、子供たちは室井さんがいなくても、石津夫婦や音松(木場勝己)さんの助けを借りて、あの家で暮らしていると思っています。家族に収れんしていくんです」と明かす。「主題歌もそうです。松山千春さんの『生命(いのち)』、まさに家族の歌ですよね。あれは僕や監督からは出てこないアイディアで、柳葉さんのリクエストでした。ある日急に柳葉さんが『松山さんに電話してオッケーもらったから』って(笑)。驚きましたけど、ぴったりでしたよね」 そして、室井の“長男”であるタカ(森貴仁/齋藤潤)が開いていた赤本は「東京大学」。つまり、彼は東大を経た警察官僚を目指しているということだ。「でも、あの家があるのに東京に行く? 僕は東北大だと思いますけど、そこの議論は僕らの間でいまだ決着してないです」と亀山プロデューサーは笑う。室井が遺した「この先」がどこに向かうのかは、まだ誰にも予測がつかないようだ。(取材・文:早川あゆみ)
『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』は全国公開中