防空壕跡地で「佐世保バーガー」、店内に星条旗…「戦争した国の人とも一緒に食べてわかり合うことはできる」
今年は戦後80年。原爆の投下や空襲など悲惨な歴史を経験した長崎で育まれ、息づいてきた平和と文化の取り組みを紹介する。 【写真】人気メニューのベーコンエッグチーズバーガー
自衛隊や米海軍が拠点を構える基地の街・長崎県佐世保市中心部の戸尾町には、「とんねる横丁」の名で親しまれる商店街がある。防空壕を利用して作られた戦後の「ヤミ市」が源流。今も食料品の小売りや飲食店など15店舗ほどが「市民の台所」として並んでおり、独特な平和利用の文化が根付いている。
ご当地グルメ「佐世保バーガー」をとんねる横丁で販売する「ベースストリート防空壕店」の店長・鈴山輝一さん(56)は「防空壕でハンバーガーを売っているのは世界中でうちだけでしょう」と胸を張る。
鈴山さんは同市の高校を卒業後、首都圏の高級料理店で修業。飲食店の店長などを務めて経験を積んだ。地元に戻り、「子どもの頃から慣れ親しんだ味を生かしたい」と、2002年にベースストリートを開店。繁華街で店を構えた後、15年ほど前にとんねる横丁の空き店舗に移転した。「戦争の被害から逃れるために使われていた場所で、ハンバーガーを楽しめるのは面白そうだ」。そんな思いがあった。
店は間口約3メートル、奥行き12メートル。高さは2メートル弱で、1980年代のアメリカ中西部を思わせるグッズや星条旗も並ぶ。常連客の米海軍兵士から譲り受けた物がほとんどだ。「ここは戦争中、シェルター(待避壕)だったんだ」と話すと、目を丸くして驚かれるという。
佐世保バーガーは、戦後に米軍関係者からレシピを教わったのが始まりとされる。2010年には地元の食材を積極的に使い、普及させることを目的とした事業協同組合も設立されており、現在では20以上の事業者が参加している。
ベースストリートで最も人気のメニュー「ベーコンエッグチーズ」(レギュラーサイズ760円)の具材もとんねる横丁で調達する。肉厚のパティと特製のオムレツ、デミグラスソースが絡んだ香ばしい野菜との組み合わせが絶妙と評判で、米兵から「母国で食べるバーガーよりうまい。アメリカにも出店してくれ」と冗談交じりに言われることもしばしばだ。