「DIOR」が世界中の女性に捧げる、女性としての誇りと美:女性アーティストの作品にフォーカスした新たな展覧会を巡る
真っ白なトワル(仮縫い服)に包まれた幻想的な部屋では、メキシコのアーティスト、エリナ・ショーヴェ(Elina Chauvet)が施した血液のような赤い刺繍が、女性の本来の強さを取り戻すよう力強く訴えかけてくるようだった。
メキシコの画家フリーダ・カーロ(Frida Kahlo)を主題に取り上げ、メキシコでショーを開催した2024年クルーズコレクションに登場したこれら作品は、女性の自立心や聡明さ、そして美しさと希望に満ちた声明として「DIOR」がファッションを通して現代に伝えたもの。 自由と平和を求め開放的な文化が開花し、プレタ・ポルテがスタートした70年代のスタイルや、ムッシュ ディオールのコレクションの中で繰り返されたテーマである、18世紀の壮麗な舞踏会や装飾品に着想した作品にフォーカスしたスペースを通して、時空を超えるような感覚をもたらす展覧内容だ。
“舞踏会”と題したスペースでは、歴代デザイナーの豪華なイヴニングドレスに加え、キム・ジョーンズ(Kim Jones)が手掛けるメンズのルックも並ぶなか、フェミニズムアートを確立した先駆者ジュディ・シカゴ(Judy Chicago)の壮大なインスタレーションも飾られた。 2018年春夏コレクションのキーワードになった、60年代に活躍したアーティスト、ニキ・ド・サンファル(Niki de Saint Phalle)の作品や、煌びやかな素材を使ってポップアートを生み出すショールーク・ライエム(Shourouk Rhaiem)、気鋭のインテリアデザイナーとして知られるコンスタンス・ギセ(Constance Guisset)といった異なる時代を生きる女性アーティストの作品も結集する。
壁一面に並べられた小さなガラスの展示品には、クロード・ラランヌ(Claude Lalanne)がデザインした風変わりな彫刻ジュエリーや、現代アーティストが再考した“レディ ディオール”のバッグ、パッチワークやビーズ細工に至るまで、メゾンとコラボレーションを果たしたアーティストはみな、独自のアイデンティティを維持しながら「DIOR」の遺産を再解釈する。