「DIOR」が世界中の女性に捧げる、女性としての誇りと美:女性アーティストの作品にフォーカスした新たな展覧会を巡る
イラストレーターとして活躍した後にギャラリーのオーナーとなり、1946年に3つのアトリエと85人のスタッフを擁するクチュールメゾン「DIOR」を、モンテーニュ通り30番地に開業した。そのわずか数ヶ月後の1947年2月に、この場所で発表したファーストコレクションで“ニュールック”の旋風が巻き起こったのだ。 続くスペースでは、パリ装飾芸術美術館での成功に続き、ロンドン、ニューヨーク、東京と世界を巡回した「クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ」展のために、日本人写真家、高木由利子が撮り下ろした写真とともにアーカイブ作品を展示する。
ドレスをまとうバレエダンサーをモデルに、2Dという平面の写真の中で“静と動”、“光と影”、そしてその間にある一瞬を捉えた高木氏の写真作品。 ブーケを愛でる西洋とは対照的な、日本独自の“一輪挿し”の美学を表現するために、1体のドレスと1輪の花が写真に収められている。
躍動する洋服というムッシュ ディオールのドレスの特徴と、彼が愛した花が、写真とドレスのうえで優美に咲き誇る。そのデザインから放たれる圧倒的なエレガンスと、動きの間に浮遊する刹那的な美が表現された写真作品には、静謐な中の弛まぬ強さという「DIOR」が描く女性らしさが感じられた。 花はムッシュ ディオールの絶え間ない着想源であった。ノルマンディー地方の町、グランヴィルの高台にあった生家を背景に、ローズガーデンを再現したスペース“庭園”では、花を装飾した文字通り華やかなクチュールドレスを展示する。
ムッシュ ディオールのオフィスや、ガラスの床を通してモデルの楽屋を備えた古いアトリエを覗くことができる、当時のサロン内を正確に再現したスペースも必見である。
部屋から部屋へ、女性アーティストによる豊かな表現力が、「DIOR」の歴史と現在を繋げていく。パリを拠点に活躍するアーティストのカテリーナ・ジェブ(Katerina Jebb)は、独自の手法である何百ものスキャンを組み合わせた“スキャノグラフィー・ポートレート”で表現した、マリア・グラツィアを含む「DIOR」の歴代デザイナーの作品を未来的な写真とともに展示。