高校球児が燃え尽きる“甲子園至上主義”の理不尽…チームより個人を優先する「リーガ・サマーキャンプ」は野球の未来を変えるか
“美談”の裏にかくれた球児の切実な思い
荻野氏も指導で携わるリーガ・サマーキャンプは、8月上旬から中旬にかけて北海道の栗山町民球場で行われる実戦形式の取り組みだ。個人応募で高校3年生を80~90人募ってチームを編成し、9日間で各チームが7~9試合プレー。最終日の試合は日本ハムの本拠地エスコンフィールドHOKKAIDOで開催される。 甲子園が“高校野球”という枠組の中で行われるのに対し、高校3年生を対象とするリーガ・サマーキャンプは“高校野球以降”につなげる仕組みが特徴だ。例えば、以下がその一部である。 ・木製バットを使用 ・全試合で投球数制限を実施 ・スポーツマンシップの学習 高校野球にリーグ戦を導入しようと活動する一般社団法人Japan Baseball Innovationの阪長友仁代表理事が企画し、参加費26万9500円(税込)。決して気軽に参加できる金額ではないが、ドラフト候補と報じられる公立高校の投手や、大学進学後に野球を続けたい者、アメリカの名門IMGアカデミーに在籍する高校生など、明確な目的を持ってエントリーしている選手ばかりだ。 そのなかで甲子園を狙える強豪私学に在籍しながら“補欠”扱いされる一人が、匿名を条件に志望動機を明かす。 「今、試合であまり投げられていない現状があります。投げるのはブルペンでの投球練習がほとんどです。ブルペンで投げているだけでは今の自分がどんな状態なのか、打者が立ったときに打ち取れるのかなどわからないことが多くあります。正直、面白くないと感じてしまうこともある。そんななかでリーガ・サマーキャンプを見つけました。参加することができれば野球をしっかり楽しめ、少しでもやり切ったと思えるのではないかと感じました。ここまでの野球生活を支えてくれた親にプレーしている姿を見せ、少しでも恩返しとなるように良い姿を見せたいという思いもあります」 甲子園でベンチ入りできずにスタンドから声援を送る選手の姿は“美談”としてテレビや新聞では語られがちだが、胸の底に上記のような思いを抱いている者もいることを忘れてはならない。彼らが野球部に入るのは、自分が檜舞台に立ちたいからだ。