「次代に負担を残さないために」だって?石破総理「信念の政策」で「国民の負担増」が避けられない「これだけの理由」
前編記事『「高すぎる物価をなんとかしてくれ!」【経済音痴】石破総理には絶対届かない「国民の悲痛な叫び」』より続く。 【一覧表】「変節」してしまった石破総理の「持論・政策」
安倍元総理との共通点
実質賃金は夏季ボーナスの影響で、今年6月に27ヵ月ぶりにプラスに浮上したものの、8月には再びマイナス圏に沈んでしまった。物価の伸びに対して、賃金の上昇が追いついていないのが実情だ(下グラフ参照)。 「賃金上昇分を企業が物価に転嫁すれば、実質賃金は抑制されます。企業が労働分配率を上げれば物価以上に賃金が上がって実質賃金も上がりますが、限界がある。したがって、実質賃金を持続的に上げていくには、生産性を上げて賃金に還元することに尽きるのですが、そのための方策を石破さんには示してほしい。 たとえば、AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)などを利用して、生産性を上げる施策を具体的に打ち出すことです。このままでは、政権がどこに向かって走っているのかが理解されないかもしれません」(ニッセイ基礎研究所上席エコノミスト・上野剛志氏) 長年温めてきた政策や持論を捻じ曲げて、岸田路線の継承を受け入れる。石破総理の「変節」はあまりに早いのではないか。だったら、岸田総理のままでもよかったのではないか。当然の批判を石破総理は甘んじて受け入れている。すべては選挙で勝つために―そんな指摘もある。 第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏が解説する。 「石破さんは老獪でリアリストな政治家だという印象を持っています。政治スケジュールを見れば一目瞭然ですが、当面は選挙対策に翻弄される。その期間は爪を隠して、円安を容認し、株高政策を進めていくのでしょう。法人増税や金融所得課税の強化も選挙期間中は封印するということです。来年夏の参議院選挙が終わってから、自身が批判してきたアベノミクスからの軌道修正に踏み切り、地方創生に励むのではないでしょうか」 安倍晋三元総理と石破総理の政策は大きく異なるが、似ている部分もあると熊野氏が続ける。 「安倍さんもリアリストで、集団的自衛権など国民に不人気でも自分がやるべきだと信じた政策は、政治的求心力を高めたうえで断行しました。石破さんもまず衆院選で勝ち、参院選を乗り越えてから、法人増税と金融所得課税を実行しようと考えているのでしょう」