「103万円の壁」は年金生活者らには無縁…物価高対策は解決できるのか?(中西文行)
【経済ニュースの核心】 毎週、近隣のスーパーやコンビニに定点景気観測のため買い物に行くと、生鮮食品を含めて食品は何でも値上がりしている。価格据え置きでも内容量を減らすステルス値上げを実感する。賃上げと無縁の年金生活者や低所得者らには厳しいエンゲル係数の上昇だが、2025年は多くの食品が値上がりする。 高齢化が進む“闇のバイター”勧誘に要注意…「怪しさ」の基準を知る 帝国データバンクの調べによると、主要な食品メーカー195社における飲食料品値上げの25年累計は3933品目で、前年同時期に公表した24年の値上げ品目見通し(1596品目)を大幅に上回るペースで値上がりする。 24年12月も単身者の必須アイテムのパックごはんなど109品目の値上げである。25年1月はパン製品の一斉値上げに伴い、単月として3カ月ぶりに1000品目超の値上げが見込まれ、来春にかけて断続的な値上げラッシュが再燃する見通し。 この25年の値上げ要因では、「原材料高」などが多数を占める一方で、トラックドライバーの時間外労働規制などの輸送コスト上昇分を価格へ転嫁する「物流費」の値上げも大きく、さらに最低賃金引き上げなどの影響を受けた「人件費」は47.9%と24年通年(26.5%)から大幅に上昇する。 連合は11月28日の中央委員会で、25年の春季労使交渉(春闘)における賃上げ目標を正式決定。基本給を上げるベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率は、全体で5%以上、中小企業で6%以上とした。「同一労働同一賃金」とはいえ、正社員中心の賃上げが派遣社員やパート、アルバイトにストレートに反映されるだろうか。 企業にとって春闘の賃上げは「人件費」の増加要因で、その原資は仕入れ価格の値下げ、あるいは据え置き、販売価格の値上げだ。現在の物価上昇は、好景気のディマンドプルではなく、人件費増加のコストプッシュのインフレである。 ■年金生活者はほぼ無縁の「年収の壁」 政府は補正予算案を12月上旬にも今臨時国会に提出し、年内の早期成立を目指している。国会は年金生活者らに無縁の「103万円の壁」と枝葉末節の議論に明け暮れているが、これで物価高が解決できるのだろうか。 こうした中、第2次石破内閣の石破茂首相と政務三役計11人が代表を務める政治団体が、23年に飲食などの名目で1回に10万円以上を計上した事例が101件に上ることが判明、総額は計約1925万円。支出先には、庶民には無縁の料亭や高級フランス料理店が並び、同じ日付で複数の店に計100万円以上を支払ったケースもあった。割安食品を探し回り、1日1000円でやりくり、物価高で苦しむ国民は置き去りか――。 (中西文行/「ロータス投資研究所」代表)