少数意見を上手に拾える仕組み「KJ法」を取り入れよう【科学が証明!ストレス解消法】
【科学が証明!ストレス解消法】#187 心理学の世界では、「同調行動」という言葉があります。他の人がやっていることを自分もしてみたいという欲求が、人間には備わっているといいます。 疲労の謎がここまで分かった(3)なぜ軽い運動が疲労を減少させるのか…酵素の産生を増やす 興味深いことに、日本政策金融公庫の「外食に関する消費者意識と飲食店の経営実態調査」(2013年)によると、飲食店を選ぶ際の重視点として、「低価格であること」をしのぎ、約7割が「入店時に時間がかからないこと」を第1位の理由に挙げています。行列に並ぶことに対して抵抗がない人は約3割ほどしかおらず、ほとんどの人は並ばずに入りたいと考えていることが分かります。 ところが、実際には日本各地の至る所に行列ができていますよね。まさしく、「できれば並びたくないけど、人気や話題性を考慮すると自分も体験しておきたい」といった同調行動が働いていることがうかがえます。また、同調行動は社会が安定していればいるほど一般的な行為になるといわれているため、「行列が大好き」「皆と同じことをしたがる」などの日本人が取りがちな行動の背景には、それだけ私たちが平和な世の中を生きていると言えるのかもしれません。 同調は厄介な存在です。この同調によって、本来、自分が下したかった決断が揺らいでしまい、後悔を誘うことが珍しくありません。皆がAと言っているから、Aに流されてしまう。自分の判断が流されてしまうバイアスがかかるわけですから、すべての物事は多数決で決まってしまう可能性だってあるわけです。そのため、社内で行われる会議や公平性が求められるような場では、上手に少数の意見を拾っていく仕組みをつくることが問われます。 「KJ法」と呼ばれる、文化人類学者の川喜田二郎がデータをまとめるために考案した手法があります。KJは考案者である川喜田二郎のイニシャルから取られたものですが、この方法ではデータをカードに記述し、カードをグループごとにまとめて解説していきます。 共同作業にもよく用いられ、「創造性開発」に効果があるとされており、裁判員裁判ではKJ法を使っている裁判体もあるほどです。裁判官の意見はとても強いため、裁判官が何か話すと皆さんそれに流され、その意見が正解だと思ってしまいます。しかし、人の命や人生を決めるような裁判で、一人の意見に流されてしまうのはあってはいけないこと。そこで、KJ法のような少数の意見を取り入れられる仕組みを導入したというわけです。 方法は、たとえば「1人10個ずつポストイット(付箋紙)に意見を書いてください」と意見を集めて、それをペタペタと壁に貼っていくことで意見の全体像を見えるようにする。そうすることで、みんなの意見を埋もれさせることなく有効化することができます。 皆の前では、恥ずかしさや気後れもあって意見が言えないという人は少なくないと思います。少数意見を拾える仕組みをつくることは、特に組織の風通しを良くするために欠かせません。限定的な決断、権威的な決断から回避するためにも、ぜひKJ法を取り入れてみてはいかがでしょうか。 (堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)