東京と愛媛、子どもらしさは地域で大差なし。高橋久美子さんが二拠点生活で感じたこと
東京の子どもたちもしっかり見ている自然
一か月前、東京の家でのこと。ソファで本を読んでいたら、庭で子どもとお母さんの声がする。 「持って帰る。絶対に、育てたい」 「でもね、この人の家の葉っぱをちぎるのは良くないでしょう。だから、ここで観察させてもらって、明日の夕方また見にこよう」 「いやだ。家に持って帰って育てるの」 なるほど、うちのレモンの木についた青虫を育てたいと言っているんだなあ。 私は、玄関を飛び出していった。 「いいですよ。青虫、ぜひ持って帰って育ててください」 二人、びっくりしている。 「この青虫を、この子はアゲハチョウになるって言うんです。私は、蛾になるんじゃないかって思うんですけどね……」 「正解! この子はアゲハチョウですね。毎年、夏になると大きくて綺麗なアゲハチョウがこの庭を飛んでいるよ」 小学1年生くらいの男の子は満足そうにして、首から下げた虫かごに青虫を入れた。 「レモンの葉も、いつでも取りに来ていいからね」 私より栗をたくさん見つけることのできる愛媛の子たちと同じように、この子は、蝶々に関してはお母さんより詳しいのだ。 もしかしたら、お母さんは家で青虫を育てたくなかったのかもしれない。でも、二人にとってこの観察はきっと良い影響をくれるんじゃないかな。 しばらくして、家の郵便受けに「レモンの葉っぱをもらいました。ありがとうございます」という子どもとお母さんの手紙が入っていた。 愛媛のように、大きな山や森はないけれど、東京の子どもたちも彼らの身近にある自然を見つめて育っているんだなと思った。 視線を少し変えると、東京にもたくさんの小さな自然がある。私は東京に出たからこそ、両方の自然の素晴らしさを知ることができたのだと思う。
高橋久美子