転換点の「原子力発電所」、再稼働目指す青森の今
地震・津波審査が進展
2024年は東北電力女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)2号機の再稼働や第7次エネルギー基本計画(エネ基)での原発の最大限活用方針の提示など、原子力事業にとって転換点の年となった。原発の立地自治体では、原子力に反対する声も、経済面などで稼働を望む声もある。国内で多くの原子力関連施設が集まる青森県の原発では、稼働を目指し努力が続く。(梶原洵子) 【写真】建設途中のJパワー・大間原子力発電所 「地域からは再稼働を願う声が大きい」。東北電力東通原発(青森県東通村)所長の小笠原和徳執行役員は話す。同原発の1号機は05年に営業運転を開始し、東日本大震災以降運転を停止している。下北半島に位置し、地震や津波の被害がなかったため、当初はいち早い運転再開を目指していたが、新規制基準適合性審査に長い期間を要している。 当初見込みよりも審査に時間を要しているのは敷地内に2本の断層が見つかったからだが、1本は将来にわたり活動しないと確認され、もう1本に関しても断層評価を進めつつ安全対策を検討する。「24年は地震や津波の審査が進んだ。25年度下期以降のプラント審査開始を目指す」(小笠原所長)とする。 女川原発が再稼働、営業運転へと進んできたことで、今後、東北電力の本社側も東通原発の新たな浸水防護対策の検討などに注力できるようになる。発電所の運転を担う人材の面でも運転再開に備えており、発電所の従業員数は運転中と同程度の規模を維持している。
フルMOX炉狙う
Jパワーは下北半島の先端に位置する青森県大間町に大間原子力発電所の建設を進めている。同原発は使用済み核燃料のリサイクル原料を使う「MOX燃料」を全炉心で利用するフルMOX発電を目指している。使用済み燃料のリサイクル(原子燃料サイクル)は燃料の国産化に位置付けられ、核のゴミの減容化にもつながる。大間現地本部大間原子力建設所長の古賀薫執行役員は「大間は原子力サイクルの一翼を担う」と意義を語る。 ただ、同原発は審査中のため工事規模を抑え気味で、安全設備に関するものは工事を進めていない。例えば原子炉建屋の建設は途中階まで進め、原子炉を覆う気密構造物(原子炉格納容器)の内壁まで設置した。原子炉格納容器モジュールは建屋の隣の保管庫で保管し、そのほかの各設備も品質維持対策を施しながら出番を待つ。 また、原発の実際の中央制御室と同規模のシミュレーターを敷地内に設置。他の原発への派遣などと合わせ、運転員の技術力向上や維持を続け、運転開始に備えている。 大間原発は町議会が1984年に原発誘致を決議してから40年が経過した。東日本大震災だけでなく、過去には国産炉型からフルMOXの改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)への計画変更もあった。完成まで長期間を要する中、地元との関係の維持が重要になる。 地元企業への工事発注は安全設備関連工事を進められない分「将来必要な建物の建設前倒しなどの工夫をして維持している」(同本部広報グループの河野徹氏)という。また、夏と冬の年2回、大間町と隣接する風間浦村と佐井村の全四千数百戸の訪問を実施し、住民の声を聞くことに努めている。「時間が経ち、昔の経緯を知らない人も増えた。さまざまなことを説明し、関心を持ってもらいたい」(同)とする。