「糖尿病」の世界の発症率 30年で大幅に上昇、死亡率は低下傾向
糖尿病とは?
編集部: 今回の研究対象となった糖尿病について教えてください。 中路先生: 糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病の2種類に大きくわけることができます。1型糖尿病は、インスリン依存型とも呼ばれており、自己免疫疾患などが原因となります。インスリン分泌細胞が破壊されるので、インスリンの自己注射が必要です。2型糖尿病は、糖尿病の中でも患者数が最も多いタイプです。遺伝的な理由によるインスリン分泌の能力低下に加えて、環境的素因としての生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が起こり、インスリンが相対的に不足した場合に発症します。 一般的に、生活習慣病とも呼ばれる2型糖尿病はインスリン分泌の能力低下が鍵を握り、生活習慣が乱れることだけではなく、2型糖尿病患者は糖尿病になりやすい遺伝的な理由を持っているとも言えます。ゲノム解析では、2型糖尿病の要因となる多くの遺伝子が報告されており、中でもKCNQ1という遺伝子が日本人の2型糖尿病発症に非常に強く関連していることがわかっています。糖尿病の治療方法は、インスリン療法やインスリン以外の薬物療法、GLP-1受容体作動薬などが使われています。
今回の発表内容への受け止めは?
編集部: イランのケルマン医科大学らの研究グループが発表した内容について、受け止めを教えてください。 中路先生: 今回公表された論文は、糖尿病の「発生率」と「死亡率」について、これまでに報告のない各国の経済状態や地理的な因子を考慮した研究としてオリジナリティの高い興味深い論文と考えられます。国の経済状態にかかわらず糖尿病の発生率が上昇しているのは、食生活の変化に加えて、診断の機会の増加、人口の高齢化なども関係しているようにも思われます。また、死亡率の低下に関しては、グローバルサウス(発展途上国)での糖尿病教育の普及や治療の改善が影響していると考えられます。
編集部まとめ
イランのケルマン医科大学らの研究グループは、世界の糖尿病の発生率と罹患率を調査したところ、2005年まで上昇傾向だった平均死亡率が、それ以降は人口10万人/年あたり0.14件減少する低下傾向にあると発表しました。研究グループは「糖尿病の発生率は上昇し、世界で最も重要な健康上の懸念であることが示された。各国は費用効果の高い糖尿病予防を実現するため、国民の健康意識を高めて活動的なライフスタイルや栄養改善を促進し、診断や治療へのアクセスを増やすようなプログラムの実施が必要だ」との考えを示しています。
【この記事の監修医師】
中路 幸之助 先生(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター) 1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。