日本中が熱狂「新NISAブームの今」の不都合な真実 後藤達也×田内学「お金と投資」対談【前編】
しかし、実際に中身を見ていると、所得収支が多い企業は現地に工場などを持っていたりするからリターンが多くなっているだけなので、そこで得られた利益はなかなか円に戻ってくるものではありません。 また、個人でも外貨で資産を作っている人は富裕層が多く、彼らがドルを買うことによって円安になると物価が上がってしまって、富裕層ではない人たちの生活がより一層苦しくなってしまいます。 このように考えると、ここ数年進んでいる為替の円安は、トータルでは日本にプラスになっていないように思えるのです。
■後藤氏「長期的にはもっと円安が進むリスクも」 後藤:日本の貿易の力が弱くなってしまったのは認めざるを得ない事実ですね。例えば2000年ぐらいのころを振り返ると、ほとんどの人がNECやパナソニック、または東芝といった国内メーカーの携帯電話を使っていました。でも、今のスマホはアップルのiPhoneやサムスンなど海外メーカーのものです。 そんな状況なので、円安になったからといって日本メーカーの輸出が増える時代ではとうになくなってしまっているのですよね。
むしろ、日本人が海外のものを買ったりとか、あるいはサービス面においても、グーグルやアップルを経由したサブスクを利用したり、YouTubeを見たりして、海外企業の売り上げ増に貢献しているのが実態です。 為替のダイナミズムで言うと、従来は、円安が進めば外国の人が「もっと日本の電化製品を買おう」とか、あるいは、日本人もグーグルのサービスを使うのではなくて、「日本オリジナルのサービスを使おう」となるはずなのに、そうならなくなってしまっています。この流れは止まらないように思います。
正直、半年とか1年後の為替水準がどうなるかはよくわかりませんが、先ほどのような状況が変わらないのだとすると、長期的にはもっと円安が進むリスクも頭においておいたほうがいいですね。 (構成:小関敦之) 中編、後編の対談記事はこちらから(後編は日経BOOKPLUSに掲載) 【中編】投資ブームを煽る「誇張や断定」とどう付き合うか 【後編】注目の著者が激論「投資教育の是非について」
田内 学 :お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家/後藤 達也 :ジャーナリスト