『家さえあれば大丈夫』西成で生活困窮者への居住支援を行う男性 雇い止めにあった人、拘置所からやってきた人らをサポート...しかし中には家賃を払わず逃げ出す人も それでも手を差し伸べ続ける理由とは
「大丈夫、家さえあればなんとかなる」と、生活困窮者への居住支援を続ける男性。助けを求める声に手を差し伸べますが、支援をした人物に“裏切られる”という悲しい現実もたびたび経験しています。それでも彼が支援を続ける理由とは。 【写真で見る】支援した人が家賃を払わず夜逃げ…敷きっぱなしの布団が残された部屋
10年間で3000人以上を“すぐ住める家”へとつなぐ
(電話で話す生活支援機構ALL・坂本慎治代表)「そこで死ぬとか言うぐらいだったら、大阪来て人生やり直した方がいいと思いますよ」 大阪市西成区の“あいりん地区”にあるNPO法人「生活支援機構ALL」。坂本慎治さん(36)は、不動産業を営む傍ら、住まいを失った人たちに向けた居住支援を続けています。メールや電話で寄せられる生活困窮者からの相談は多い時で月に300件ほど。10年間で3000人以上を“すぐ住める家”へとつないできました。 この日、坂本さんのもとを訪れたのは、気温10℃を下回る中、数日間、公園で野宿をしていたという男性(59)。日雇いの建設作業員として働いていましたが、収入が激減して家賃を払えなくなり退居を余儀なくされました。 (男性)「物乞いするのも無理で、ゴミをあさるのも絶対無理で。今まで生きてきたので、今回だけは助けてください。お願いします」 (坂本代表)「わかりました。もう安心してください」
相談者にすぐ住居を用意 背景にあるのは“過去の苦い経験”
面談を終えるとすぐさま大阪市内のワンルームマンションへ。急な入居に対応するため家具や家電のほかインスタント食品などが用意された部屋です。支援物資は、寄付と坂本さん自身の不動産業での収益によって賄われています。 活動に賛同するマンションのオーナー15人ほどが物件の管理を坂本さんに任せていて、相談に来た人が空き部屋へすぐに入居できる仕組みです。入居までの早さにこだわるのは、過去の苦い経験があったから。 (生活支援機構ALL 坂本慎治代表)「夜7時に相談に来た人がいて、そのとき僕、面談中だったんですよ。『ちょっと今混んでいるから、きょうもう遅いからあした来てくれるか?』と言ったら、次の日に来なくて。数日後に警察が来て『この人、来ていましたよね?』となって、『来ていたけど、あした来てと言って来なかったですわ』と言ったら、『神戸港に浮いていました』みたいな。あのとき、うわ、しくじったと思って。あしたまた来てねと言うだけだったら、あした来ないかもしれないし、死んでいるかもしれないんですよね」