「認知症支援」家族より本人の意向を尊重するスウェーデン 本人より家族や支援要請者の意向を尊重する日本
命の危険があっても本人の希望尊重
例えば、転倒を繰り返す高齢の認知症の母親に対し、娘がより安全な施設での生活を望んだとしても、母親がそれを希望しなければ、訪問介護や夜間の見回り回数を増やすことが提案されます。そして本人がそれを受け入れ、独居生活が続けられます。もちろん、転倒すれば頭をぶつけて死ぬ危険があることを本人にわかりやすく説明した上で、希望を確認します。 スウェーデンには、認知症であっても「自己決定には自己責任が伴う」という価値観があります。家族はケアチームが本人の人権を第一に考えていることに納得すると、たとえ家族が希望しない支援でも受け入れます。もちろん、延命医療についても本人の希望が尊重されます。(長谷川佑子)
自己責任という考えがある国、ない国
認知症患者の意思尊重に関して、両国には大きな違いがあります。スウェーデンでは、認知症患者においても自己責任に基づく自己決定が尊重されます。驚くことに、本人が医療機関につながることを拒否した時には、市は医療機関に情報提供をすることができず、本人が医療を求めていない場合には、医療機関は動きません。日本と違って、医療につながっていなくても生活支援ができます。 一方、日本では、介護保険サービスは医師の診断書がないと利用することができません。保護する責任のある者が保護を怠れば犯罪になり、認知症患者に自己責任があるとは考えません。責任は周囲が取るため、本人には自己決定権はほとんどありません。そのため、本人の意思よりも家族や地域住民の意思が尊重されます。 しかし、日本の「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」には、「本人の示した意思は、それが他者を害する場合や、本人にとって見過ごすことのできない重大な影響が生ずる場合でない限り、尊重される」とあります。失火や金銭搾取や重篤な健康問題等は別ですが、本人に重大な影響が生じない限り、自己責任に基づく自己決定を尊重するべきではないでしょうか。 認知症になっても自分の望む人生を歩みたいものです。自己責任による自己決定が常識になれば、本人と家族の摩擦も減り、家族は精神的に楽になると思います。(宮本)