小中給食費無償化の青森県、教育改革の中身は? 教員の専門性発揮のため「金八ギャップ解消」を
先生の負担軽減には「金八ギャップ」の解消が重要
──青森県知事に就任してすぐ、教育界の名だたる有識者を集め、知事直轄の会議体となる「青森県教育改革有識者会議」(以下、有識者会議)を設置されました。その狙いについてお聞かせください。 2014年に一部改正された「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」により、知事が総合的な施策や方針を定めた教育大綱を策定することになりました。だからと言って、知事としての思想信条や思い込みで教育改革を達成しようとするのは間違いだと思いますし、現場はついてきません。そこで、全国の教育現場で実践されている方々のご意見を伺ったうえで方針を示そうと、有識者会議を立ち上げました。 ──有識者会議では教員や保護者を対象に青森県の教育に関するアンケートを実施・公表していますが、回答をご覧になっていかがでしたか。 アンケートの回答はすべて見ました。私はむつ市長時代を含めて10年にわたり、首長としてさまざまな声を伺ってきましたが、改めて「これほど現場は悩んでいるのか」と胸と頭が痛くなる思いでした。私も子を持つ親ですから、同じような悩みを抱えている親御さんが多いことも感じました。 教員の方々の回答で印象に残っているのが、職場の人間関係の悩みが多いこと。学校現場には先生の相談相手が少ないので、現場の心理的安全性の確保、その中での対話やマネジメントが求められていると思いました。また、学校や先生に対する保護者からの強い不満も多かったです。 アンケートだけでは詳しい原因分析はできませんが、現場のフラストレーションがかなり高まっているのは確かであり、大きな課題としては、先生が担う必要のない仕事まで抱えている現状が改めて見えてきました。先生の自己犠牲のうえに成り立つシステムは持続可能ではありませんから、先生の役割の明確化が必要だと思います。 私は、個人的にドラマ「3年B組金八先生」が大好きなのですが、この何でもやりすぎてしまう昭和の先生像を理想像としてしまうと、さまざまな誤解が生じると感じています。言ってみれば「金八ギャップ」ですね。これを解消するのが今の時代に必要な教育改革だと考えています。 大学時代から志を持って専門的に勉強し、日々実践で技術を磨いていらっしゃる先生方を私はリスペクトしています。だから、先生方が本来の専門性を発揮する環境をいかに私たちが作っていくかが大事だと考えています。 まずは、本来は先生が担うべきではない役割をいったん切り離し、先生が専門性を発揮できる環境にする。こうした金八ギャップの解消により、逆説的に金八先生のように人間性を大いに発揮できる先生も自然と増えるのではないかと考えています。