アメリカと日本の「核密約」をめぐる「ドタバタ劇」…アメリカはどのように日本から「軍事特権」を奪いとったのか?
難解な条文
私は安保条約についての本を書くようになってから、いわゆる「六〇年安保」世代の方たちと、ときどき対談させていただくようになりました。 そうしたときに、みなさん口をそろえておっしゃるのは、 「安保反対運動は激しかったけれど、安保条約の条文なんか、誰も読んでなかった」「ただ元戦犯容疑者の岸が変なことをやろうとしていたので、全力で反対してたのだ」 ということです。 その雰囲気はとてもよくわかります。条文というのは難解で、最初は読んでも意味がまったくわかりません。私も8年前に沖縄の基地問題について調べ始めるまで、安保条約の条文など、生まれてから一度も読んだことがありませんでした。 けれども少し視点を変えて、私たち日本という国に住む人間の基本的人権が、なぜ現在、米軍に対して失われてしまっているのか。 なぜ21世紀のいま、米軍は自分たちの国では絶対できない危険な低空飛行訓練を、他国である日本の上空では行うことができるのか。 いったい、いつ私たちは、そうした権利を彼らに与えてしまったのか。 そうしたシンプルな疑問をいくつも頭に思い浮かべながら読んでいくと、日米安保の条文の持つ本当の意味が、少しずつ理解できるようになったのです。 * さらに連載記事〈なぜ日本は、アメリカによる「核ミサイル配備」を拒否できないのか? 〉では、近代国家として信じられない状況になってしまった経緯をみていきます。
矢部 宏治