「病院薬剤師」不足病院へ派遣 聖隷浜松→御前崎総合 地域医療充実へ連携加速
聖隷浜松病院(浜松市中央区)は、病院での治療に必要な医薬品を扱う「病院薬剤師」が不足する御前崎総合病院(御前崎市)へ薬剤師の派遣を始めた。地域の中核となっている総合病院の薬剤師を補い、中東遠地域の医療を支える。 聖隷浜松病院は、3年以上の勤務経験がある薬剤師を、3カ月交代で出向させる。2024年度の診療報酬改定で新設された「薬剤業務向上加算」を活用する。同制度に伴う薬剤師の派遣は静岡県内初という。 御前崎総合病院は1994年に10人いた薬剤師が、現在は9月に聖隷浜松病院から出向した内田和葉さん(32)を除き、6人と減少した。病院薬剤師が不足すると、患者の薬歴管理や服薬指導に関する「薬剤管理指導件数」が減少するほか、注射の調製でミスが生じたり、調剤の二重チェックが行えなくなったりする恐れもあるという。 御前崎総合病院薬剤科の境沢潤科長(54)は「以前は1人で調剤や患者への説明を同時にこなさなければならない状況も多かった。人手が増え、優先順位を付けて業務に臨める」と歓迎する。 聖隷浜松病院にとっても薬剤師の派遣は、経験が積めるメリットがある。同病院所属の薬剤師は9月1日時点で内田さんを除いて76人。薬の相談に関する業務は、それぞれの専門の職員が担うなど仕事が細分化されるが、御前崎総合病院では一人一人が多様な業務に対応する。同病院に出向する内田さんは「病院全体のさまざまな流れについて理解が深まる」と意欲的だ。 聖隷浜松病院の矢部勝茂薬局長(51)は「当院の薬剤師の技能向上と、出向先病院の業務充実という薬薬連携の体制を構築していきたい」と話す。 ■病院薬剤師の充足度 静岡県は40位 厚生労働省が、病院薬剤師の入院患者1人当たりや処方1件あたりなどの労働時間を基に算定した「病院薬剤師偏在指標」で比べると、都道府県別で薬剤師が最も充足しているのは京都府で、静岡県は40位だった。最下位は青森県。 聖隷浜松病院の矢部勝茂薬局長によると、薬剤師の給与水準は一般的に、病院と比べてドラッグストアの方が高い。地方病院は都市部に比べて資格認定などに必要な症例数も少なくなりがちで、専門性を高めたい学生からも選ばれにくいという。
静岡新聞社