泉鏡花の名作「婦系図」で片岡仁左衛門、坂東玉三郎が共演 10月に東京・歌舞伎座で
東京・歌舞伎座で10月2日に開幕する「錦秋十月大歌舞伎」で泉鏡花の名作「婦系図」が上演され、片岡仁左衛門、坂東玉三郎が出演する。仁左衛門は独逸語学者の早瀬主税を、玉三郎は元芸者のお蔦を勤める。本作で2人が共演するのは今回が初めてとなる。 「婦系図」は、新派の代表的演目で数多くの名優が演じてきた。また仁左衛門や玉三郎も、新派の公演に度々客演してきた。 取材会で仁左衛門は「先代、当代の（水谷）八重子さん、（波乃）久里子さんたちとは一緒にお芝居させていただいているので、新派も好きだ。2人で新派をやるのもいいのでは」と、今回の上演が決まったと明かした。 特に自身が演じる主税は好きな役だという。その理由については、玉三郎が「主税の多面性や芯のあるところがお好きなのだと思う」と代弁した。 2人は長年舞台でコンビを組んできたこともあり、互いを理解し合う仲だ。仁左衛門は自身の父、十三代目仁左衛門と玉三郎の父、守田勘弥との親交が深かったことを挙げながら「その息子同士が自然と仲良しになった」と語った。 主税は恩師への義理立てから、所帯を持ったお蔦と別れなければならない。仁左衛門は「今の時代の別れと当時の別れとは全然違う。その切なさが伝われば。非常にしんどい役で苦しんでいる間が一番難しい」と、この役の眼目を説明した。 一方、玉三郎は「あまり幸せでは物語にもならないのでは。でも2人が思う気持ち自体は幸せだったのではないかと思う。結ばれてうまくいったから幸せになれるかというよりも、別れたから美しかったということもある」と語った。 10月26日まで。問い合わせは、チケットホン松竹（0570・000・489）。（水沼啓子）
